2018 Fiscal Year Annual Research Report
TERT異常に着目した肝発癌モデルの樹立と第三世代シーケンサーを用いたゲノム解析
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18J00565
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
竹田 治彦 千葉大学, 予防医学センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 肝癌 / TERT / 第三世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌は、その高い再発率や多中心性発癌という発癌様式などから極めて根治困難であり、全世界で第2位の癌関連死の原因とされる。切除不能肝癌においては月単位の生存期間延長に留まり、根本的な治癒が望めないのが現状である。近年の全ゲノム解析の結果から、肝癌のゲノム異常は極めて多様性に富んでいることが分かり、それが治療困難性の一因であると考えられることからも、発癌機構の解明と治療法の開発は全世界的にも喫緊の課題である。特にTERTの異常が肝癌で最も頻繁に検出されることから、TERTに着目して研究を計画した。 分化した肝細胞に特異的にTERTを強制発現させて、肝細胞におけるテロメラーゼ活性を上昇させることで、肝細胞の寿命が延長し、肝癌の発生起源となること、また、このTERT発現肝細胞への多段階のゲノム異常の負荷によって肝癌が発生することをin vivoおよびin vitroモデルを用いて検証することを本研究の目的とし、本研究を開始した。さらに、Tertを肝細胞に過剰発現したマウスの遺伝子異常や発現変化を網羅的に解析することで、TERTの過剰発現した肝発癌における遺伝子変化の全容を明らかにし、新たな治療標的を探索することを目的としている。 上記目的を達成するために、一年目には、分化した肝細胞に特異的にTertを強制発現させて、肝細胞におけるテロメラーゼ活性を上昇させたマウスモデルを最初に作成した。現在、匹数を増やしながら経過観察を続けている。 上記と並行して、ヒト肝癌症例の臨床検体を集積しており、癌部および非癌部から抽出したDNAを用いて、ゲノム解析(ターゲットシーケンスおよび全ゲノムシーケンス)を開始している。想定通り、TERTを中心とした異常(promoter変異や転座、HBV組込など)が検出できており、この解析方法を用いて、今後のマウスモデルの包括的解析への応用を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分化した肝細胞に特異的にTERTを強制発現させて、肝細胞におけるテロメラーゼ活性を上昇させたマウスモデルを最初に作成することとし、一年目にマウスの作成を行った。まず、CAGプロモーター下にLoxp-polyA-loxp配列および、その下流にTERT遺伝子を挿入したコンストラクトを作成し、TERT conditional transgenicマウスを誕生させた。ヘテロマウスの交配を行い、尻尾から抽出したDNAを用いたquantitative real-time PCRにてTERTの発現量を測定することで、ホモ化マウスを抽出した。任意の時期にタモキシフェンを投与することでTERTの発現が上昇する、ALB-CreERT2-TERTマウスの作成を、当初の計画では考えていたが、誕生に至らず、代替としてALB-Creマウスとの交配にて、胎生期から肝細胞でTERTが発現するマウスモデルでの表現型解析をまず行う方針とした。 研究計画を一部変更せざるを得なくなったが、幸い別モデルを考案し、胎生期より肝細胞でTERTが恒常的に発現しているモデルマウスの誕生に成功することができたため、このモデルマウスの交配を進めて、発癌を中心に、肝での表現型の解析を進めていく予定である。 一方、平行して進めているヒト癌サンプルについては、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析が順調に進んでおり、データを蓄積しつつある。TERTについては、プロモーター領域のターゲットシーケンスを行い、肝癌サンプルでの変異検出を行うほか、肝癌関連遺伝子の変異検出も進んでいる。 以上の進捗より、研究計画は順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目に、予定通り、肝細胞でテロメラーゼが高発現するマウスが誕生することは確認できたが、出生個体数が少なく、未だ十分な個体数に達していない。今後は、特定のマウスの交配を繰り返し、まず該当モデルマウスの個体数を増やし、肝組織においてTERT発現が上昇していることをreal time RT-PCRで確認する。 同マウスは肝細胞特異的にTERTが高発現すると予想されるマウスであり、TAA投与による肝炎刺激を加えることによって、肝発癌を模したモデルになることが期待される。引き続き経過観察を行い、4週、8週、12週、24週、48週での肝組織の検索を行い、発癌の有無および、肝腫大など肝組織像の変化について、継時的に観察を行う予定である。癌が確認できれば、癌組織より順次DNA、RNAを抽出し、次世代シーケンサーおよび第三世代シーケンサーによるゲノム解析を開始する。 また、引き続きヒト検体を用いてゲノム解析を進め、データを集積した上で、マウスモデルで発癌が見られた際への応用を検討していく予定である。
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