2019 Fiscal Year Annual Research Report
衛星観測データと数値モデルを用いた全球陸域土砂動態の解明
Project/Area Number |
18J00585
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳩野 美佐子 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 浮遊砂濃度 / 土砂生産量 / 全球土砂動態モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は衛星観測データを用いた面的な浮遊砂濃度推定及び土砂動態モデルの土砂生産過程の改良に取り組んだ。 昨年度に引き続きAmazon川流域のObidos観測所を中心に全球土砂動態モデルにより出力される0.5度空間解像度の浮遊砂濃度と250m空間解像度のMODISによる反射率を用いて回帰分析を行い、得られた回帰式をMODISの反射率に適用し浮遊砂濃度の推定を行った。2001-2010年におけるObidos観測所の現地観測データと比較した結果、モデルと比較すると季節変動の精度が向上していることが分かった。また、Obidos観測所の周辺ピクセルにも同様の手法で回帰分析を行い、面的な浮遊砂濃度を推定し、現地観測データを用いた既往研究と比較しても季節変動は類似している。河道内と周辺の氾濫原の浮遊砂濃度の差も表現できており、河道と氾濫原における土砂の動きの違いの理解に貢献すると期待できる。 これまで開発を進めている全球土砂動態モデルでは陸面から河道への土砂流入量が浮遊砂輸送量に大きく影響することが分かっている。Tan et al. (2018)の結果から最も精度の高かったMorgan-Morgan-Finney式(以下Morgan式)を基にした河道への土砂流入量による浮遊砂輸送量への影響評価を行った。相関係数は全体的に小さくなる傾向があり、表面流出により河道への輸送が制限されることによるピークのずれがひとつ原因として考えられる。ミシシッピ川流域は浮遊砂輸送量の過小評価が目立つ地域であったため、Morgan式によりミシシッピ川流域では土砂流入量が増えることで浮遊砂輸送量の増加につながり、RMSE率は小さくなり過小評価が緩和された。Morgan式の他地域への適用やTan et al. (2018)に含まれる他の土砂生産モデルとの比較によりさらなる浮遊砂輸送量の精度向上を今後の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数値モデルと衛星観測を組み合わせた浮遊砂濃度推定をアマゾン川の主要観測所付近に1ピクセルだけでなく周辺ピクセルにも同じ手法を適用し面的な高解像度浮遊砂濃度データを推定し、季節変動を再現することができた。また、また、今年度は9月よりアメリカのヒューストン大学に滞在しHong-yi Li氏と共同研究を進めており、陸面から河道への土砂流入量の精度向上によりモデルにより出力される浮遊砂輸送量の誤差率を小さくすることができた。 これまで開発を進めた全球土砂動態モデルに関する論文を投稿し現在査読中であり、上記に関する論文をまとめた論文も執筆中である。以上より、今年度は大きく進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度に引き続きヒューストン大学のHong-yi Li氏との共同研究を進め、全球土砂動態モデルへのダム操作及び堆砂等ダム内の土砂の動きを導入する予定である。Hong-yi Li氏らの開発しているモデルではダム内の土砂の捕捉のみ考慮されているが、本研究ではダム内の土砂管理方法等もモデル化し、ダムが存在することによる土砂輸送量への影響評価を行う。また、今年度に引き続き河道への土砂流入過程を他の既往研究とも比較検証を行う。これらの得られた結果をとりまとめ、学会発表及び論文執筆を行う。
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Research Products
(2 results)