2020 Fiscal Year Annual Research Report
人間環境の批評についての理論構築――居住者・観光者の環境美学――
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18J00618
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
青田 麻未 成城大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 環境美学 / 日常美学 / 観光 / 居住 / 美的経験 / 地域芸術祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、より十全に人間環境における批評の様相を解明することを目的とするものである。そのために①人間環境固有の美的経験の基礎的構造を明確にした上で、②個々の立場からの美的経験と、それに基づく美的判断が規範性を持つための条件を提示する。さらにそのようにして得られた理論を、③具体的な実践例を参照することで検証・洗練するものである。 今年度は主に、②の研究成果を洗練することに努めた。本来であれば③の研究を進める予定であったが、後述するように新型コロナウイルスの影響で想定していた奥能登国際芸術祭での調査を行うことができなかったためである。②の研究は、具体的には居住者と観光者という二つの立場からの環境の美的経験のあり方をそれぞれ明らかにすることを指す。すでに昨年度、この点については学会発表というかたちで成果を公表していたが、今年度はさらにオンラインの研究会などでそれらを洗練させ、それぞれ独立した英語論文のかたちに仕上げ、論文投稿を行った。これらは現在査読結果を待っている状況である。②の研究は確かに昨年度すでにある程度の完成を見ていたものであるが、しかし居住にしても観光にしても、まさに現在進行中の問題である新型コロナウイルスによる移動の制限という出来事と不可分な事象である。そのため特に観光については、現実の状況についての考察を加えることで、よりアクチュアルな問題へと環境美学を接続する回路を構築することができた。 また今年度は、これまでの研究成果をまとめた単著を刊行することもできた。③の研究を進めることは叶わなかったが、しかし来年度以降のための素地として地域芸術祭の芸術的価値を環境美学の観点から考えるという研究を行い、理論構築を深めた。この成果も現在論文として投稿し、査読結果を待っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、今年度は奥能登国際芸術祭とフィールドとして、観光者と居住者の美的鑑賞のあり方の違いについて構築してきた理論の応用性を実際に試すという段階へと研究を進める予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で同芸術祭が2021年まで延期されることとなり、フィールド調査を行うことができなかった。 しかしそのぶん、地域芸術祭の芸術的価値について、アーティスト、観光者、居住者という三つの立場の人々がそれぞれに環境を批評するという観点から論じることで、理論構築をさらに深めることができた。これは、採用中断を経て来年度実際に奥能登国際芸術祭にて調査を行うための素地がより充実したということを意味する。そのため現在までの進捗状況を、「(4)遅れている」ではなく「(3)やや遅れている」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
採用中断から復帰したのち、今年度進めることのできなかった奥能登国際芸術祭でのフィールド調査を行うことで、これまで構築してきた理論の実践への応用可能性を検討する。まずは実地での作品鑑賞やインタビュー調査などを進めることで、居住者と観光者の美的経験の違いについて、これまで考えてきたことでどれだけ捉えることができるのかを確かめる。おそらくこの過程を経ることによって、これまでの理論も見直しを迫られると思われる。その際には、文献調査などをさらに進め、理論の洗練にもう一度着手する予定である。
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Research Products
(6 results)