2018 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系内のカオス的輸送機構の解明と応用:中エネルギー軌道力学の展開
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18J00678
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
大島 健太 国立天文台, 天文情報センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 天体力学 / アストロダイナミクス / 空間円制限三体問題 / 安定・不安定多様体 / Co-orbital orbit / 軌道面外方向の不安定性 / Near rectilinear halo orbit / Quasi-satellite orbit |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,円制限三体問題においてある程度エネルギーが高い場合に生じる,空間問題特有の遷移現象の解析と応用に関する以下の研究を実施した. A. 有限時間リアプノフ指数を計算することで,co-orbital orbitを力学的に分け隔てる構造を可視化した.得られた構造から軌道伝播することでほぼ周期的な運動を抽出して周期軌道に収束させることで,L4・L5 axial orbitと呼ばれる不安定周期軌道のファミリーが,co-orbital orbit間の遷移現象を司ることを見出した.さらに,L4・L5 axial orbitは不安定性が弱いことや付随する安定・不安定多様体がco-orbital orbitに長期間捕捉されることから,宇宙機の軌道設計への応用可能性を示唆した. B. 平面周期軌道の軌道面外方向の不安定ダイナミクスを探求した.天体力学に関しては,平面quasi-satellite orbit(QSO)の軌道面外方向の不安定性に付随する安定・不安定多様体は,大きな離心率を持ち数十度の振幅の軌道傾斜角の振動を,長期安定かつ周期的に示すことがわかった.三次元の線形安定な分岐解のファミリーがその周りに安定・不安定多様体を捕捉することで,長期安定な軌道傾斜角の振動を駆動することを示した.宇宙機の軌道設計に関しては,リアプノフ軌道の軌道面外方向の不安定性に付随する安定・不安定多様体は,第二天体を複数回フライバイすることで軌道傾斜角が大きく変化し得ることを見出した.Near rectilinear halo orbitおよび平面QSO近傍に到達する安定多様体を初期予想として最適化することで,先行研究と比較して燃料消費量を大きく低減できる軌道を設計できることを示した.宇宙機の軌道設計において,軌道面外方向の不安定性に付随する安定・不安定多様体の初めての応用であり,今後の進展が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画にある程度沿った形で,天体力学および宇宙機の軌道設計にまたがる多くの研究成果を発表できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 円制限三体問題において,従来は低エネルギー領域に適用されてきた不変多様体チューブ構造に基づく遷移ダイナミクスの解析手法を,中・高エネルギー領域に拡張する.特に,一つの平衡点(ラグランジュ点)に付随する不変多様体だけではなく,複数のラグランジュ点の不変多様体が協同して形成するセパラトリクス構造の役割に注目する. (2) 中・高エネルギー領域において第二天体近傍への遷移軌道探索を目的として自身が提案した,第二天体中心を通過する特異的な衝突軌道の有用性を,低エネルギー領域においても示す.また,不変多様体と衝突軌道の第二天体近傍への遷移軌道探索における有用性の,エネルギーに依存したトレードオフを統計的に明らかにする.
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