2018 Fiscal Year Annual Research Report
KAGRAにおける低周波数領域のキャリブレーション手法の開発と実装
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18J00682
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
小坂井 千紘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 共通基盤研究施設, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重力波 / キャリブレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、KAGRA のh(t)キャリブレーションのための光輻射圧キャリブレーター(Photon Calibrator, 以下 PCal)の開発とインストールを行った。 PCal とは、干渉計の鏡にメインのものとは別のレーザーを照射し、その輻射圧で鏡に変位を与える装置である。このPCal のレーザー強度測定から、鏡の変位の大きさを測定することができるので、これを干渉計のキャリブレーションの基準として用いることができる。 KAGRAでは、PCal を干渉計の腕の終端近くに2つ設置する。私は、そのうちの一方の開発・インストール・デバッグを行なってきた。 レーザー強度の制御には、Optical Follower Servo (OFS) と呼ばれる電子回路を用いた。これは、求められるレーザー強度に対応する入力信号と、Tx モジュールでの光検出器からのフィードバック信号を使って、レーザー強度の調整を行うAOM への入力信号を与える回路である。この回路の組み立て、デバッグを行い、問題なく動作させることができた。その後、光学系と組み合わせて統合試験を行った。Transfer function やノイズ測定を行い、設計通りの特性となっていることを確認して、KAGRA へのインストールを行った。 9月は、PCal のレーザーを干渉計の鏡に当てるためのペリスコープのインストールを行った。ここでは、レーザーの最も細い部分が干渉計の鏡の部分に来るように調整する必要がある。すでにインストールが終わっていたもう一方の PCal で、レンズの収差によってビームプロファイルが理想的でなくなる問題が見つかっていたため、レンズの組み合わせを変更したところ、問題を解決し理想的なビームプロファイルを得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、KAGRA のh(t)キャリブレーションのための光輻射圧キャリブレーター(Photon Calibrator, 以下 PCal)の開発とインストールを行った。KAGRAは2019年秋に、LIGO とVIRGO が行なっている重力波観測網に参加することを目指している。そのために、ハードウェアのインストールは昨年度中に終えることが必須であった。私の担当している PCal は、無事にインストールを終え、デバッグや性能評価まで行うことができたので、スケジュール通り順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
KAGRA が LIGO-VIRGO との同時観測を行うにあたって、現在追いついていないのがノイズの理解である。そこで、今後はデータ解析で KAGRA のノイズハンティングを行う方針である。 重力波観測で問題になるノイズの一つは、グリッチと呼ばれる一時的な外乱によって発生するノイズである。これが、重力波によるものなのか地震など別の原因によるものなのかを確実に判別しなければならない。KAGRA では、加速度計・地震計・マイク・磁束計・温度計・湿度計といった環境測定センサーを要所要所に配置しており、これらのデータを利用することで外乱の有無を調べることができる。また、インジェクションテストなどの方法で外乱とノイズの関係を理解しておくことで、ノイズの原因が測定された外乱によるものかどうかを判別することができる。また、この手法は定常的なノイズにも応用することができ、測定された外乱に対応する干渉計の応答を差し引くことで、h(t)のノイズを落とすことができる。 また、定常的なノイズの長期トレンドの評価が必要である。これは、連続波や背景重力波など長期データが必要な解析をする上で重要である。この評価をするためには、ノイズ測定値の統計分布を理解し、適切な指標を作る必要がある。現在のところ、同時刻の周波数ごとの測定値を統計的に評価して指標を作ることを検討している。また、ノイズの長期変動を調べることで、温度変化や地震など低周期の環境変動と干渉計の応答との相関を知ることができると期待できる。
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