2018 Fiscal Year Annual Research Report
社会的相互作用中の社会的注意発達過程の解明:自閉症・ウィリアムス症候群間比較研究
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18J00683
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
白野 陽子 自治医科大学, 医学部 先端医療技術開発センター 脳機能研究部門, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ウィリアムス症候群 / 自閉スペクトラム症 / 社会的相互作用 / 発達障害 / アイトラッカー / fNIRS / EEG / 社会的認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)とウィリアムス症候群(WS)における社会的注意の発達過程を長期縦断的に比較検討し、社会的認知における各群の障害の本質を明らかにすることを目的としている。平成30年度は、3歳から14歳までの定型発達児(TD)、WS児、ならびにASD児を対象とした2つの行動実験に加え、乳児を対象とした近赤外分光法(fNIRS)と脳波計(EEG)を用いた2つの脳機能実験を実施した。(1)実際のインタラクション場面における視線パターン:TD児、WS児、ASD児を対象として、実験者との自然なインタラクション場面(共同注意、模倣、歌を歌う)における子どもの視線パターンを比較検討した。予備的解析の結果、共同注意課題においてのみ、疾患間に差がある可能性が示された。(2)TD児、WS児、ASD児における感情理解:お話に出てくる登場人物の気持ちに感情をラベリングさせる課題を行い、疾患間で感情の理解に違いが見られるのか検討した。予備的解析の結果、WS児は「過去の記憶に基づく感情」および「複雑な感情」の理解が、TD児やASD児に比べて苦手であること、ASD児とTD児では成績に大きな差が見られないことが示唆されている。(3)自然なインタラクション場面における社会的信号への乳児の脳反応:強力な社会的信号であるとされる「随伴刺激」に対する6-7ヶ月児の脳反応を、fNIRSとEEGを用いて検討している。これまでのfNIRSデータの結果より、随伴性の処理には、右の側頭頭頂接合部(TPJ)領域がかかわっていることが示唆されている。さらに、ASDリスク乳児を対象としたfNIRS計測や、EEGを用いた脳機能計測にも着手しており、随伴刺激の処理について、より詳細な脳内基盤の解明を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3歳から14歳までのTD児、WS児、ならびにASD児を対象に2つの行動実験を実施し、90名を超える参加児のデータを集めることができた。TD児とASD児に加え、希少疾患であるWS児のデータについても、着実に収集されている。また、fNIRSとEEGを用いた2つの脳機能実験では、合わせて約60名の乳児の脳活動を計測することができている。これまでに取得したTD児、WS児、ASD児における自然なインタラクション場面での視線パターンを解析した結果、WS児やASD児では、TD児と比べて自発的な共同注意に困難を示すことが示唆された。しかし、応答的共同注意場面や、共同注意以外の場面(模倣や歌を歌う)においては、疾患間で注視パターンに大きな差は認められていない。これらの結果は、どこに注意を向けるべきなのかが相手によって明確に示されている自然なインタラクション場面においては、WS児やASD児といった発達障害児であっても、TD児と変わらない視線パターンを示すことを示唆するものである。また、視線パターンの分析だけでなく、感情理解、言語、コミュニケーション行動といった、他の行動指標との関連についての検討も進めることができている。さらに、乳児を対象とした脳機能研究の結果の一部については、2018年7月に行われた日本神経科学学会にて第一著者として発表を行い、同じく2018年7月にアメリカで開催された国際赤ちゃん学会にて口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、(1)前年度に引き続き、実際のインタラクション場面におけるTD児、WS児、ASD児の視線パターンを、視線追従装置を用いて計測するとともに、(2)ASDハイリスク乳児とローリスク乳児の社会的刺激への脳反応を、fNIRSおよびEEGを用いて計測する。また、(3)これまでに取得した視線反応データおよび脳反応データの解析結果を研究成果として発表していく予定である。さらに、(4)fNIRSを用いたASD児とTD児の脳機能研究に着手する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Cerebral activations to socially positive, negative, and non-social contingency during live interactions in infancy2018
Author(s)
Hakuno, Y., Hata, M., Hachisu, T., Suzuki, K., & Minagawa, Y.
Organizer
The XXI Biennial International Conference of Infant Studies
Int'l Joint Research
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