2018 Fiscal Year Annual Research Report
NASHにおけるマクロファージ鉄代謝の病態生理的意義の解明
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18J00710
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金森 耀平 名古屋大学, 環境医学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 鉄代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満に伴う脂肪肝が進行すると、炎症と線維化を特徴とする非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症する。NASHの発症には肝臓における鉄代謝の破綻が関与する可能性が提唱されているものの、実体は不明である。NASHでは、脂肪蓄積した肝実質細胞を炎症性マクロファージが取り囲む構造(王冠様構造)が出現し、王冠様構造を足場に線維化が起こる。本研究の目的は、①「マクロファージ鉄代謝が王冠様構造の形成ならびに王冠様構造を起点とした線維化」、及び、②「NASHの進行における炎症促進性/抑制性マクロファージの割合ならびに機能」に及ぼす影響を解明することである。 今年度は、MC4R-KOマウスに高脂肪食を20週間負荷しNASHを誘導するモデルを利用し、2種類の動物実験を行った。第1に、デキストラン鉄の投与によりマクロファージ特異的に鉄負荷を行い、MC4R-KOマウスのNASH誘導において、マクロファージの鉄代謝を外因的に変化させた。第2に、磁気細胞分離ならびにFACSを利用し、肝臓マクロファージを細胞内鉄含量が高い集団と低い集団(Fe-hi、Fe-lo)に分離する実験系を確立できたため、高脂肪食負荷4週間、8週間、20週間後の各タイムポイントにおいてMC4R-KOマウス肝臓からFe-hi、Fe-loマクロファージを回収した。いくつかの炎症性マーカーの遺伝子発現はFe-hiマクロファージにおいて高く、マクロファージ特異的鉄負荷により肝臓において炎症関連因子が発現亢進することを見出した。したがって、肝臓マクロファージにおける細胞内鉄含量はNASHにおけるマクロファージの疾患特異性の獲得に関与する可能性が強く示唆された。さらに、Fe-hiとFe-loではマクロファージの機能に関わる因子の発現パターンが異なることを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の目標として、肝臓マクロファージを細胞内鉄含量により分類する方法を確立し、当研究室独自のNASHモデルを利用して、NASHの病態形成過程における肝臓マクロファージを、細胞内鉄含量に応じて分類しサンプリングすることを目指した。現在までに、肝臓には細胞内鉄含量の異なるマクロファージ集団が存在し、遺伝子発現の解析から、NASHの進行過程において、Fe-hi集団とFe-lo集団では炎症や線維化に関わる機能特性の変容様式が異なる可能性を見出している。『疾患組織では多彩なマクロファージ集団が存在し、疾患の進行を決定づける疾患特異的マクロファージ集団が存在する』とする近年提唱されている概念に照らし合わせて考えると、今年度得られた結果は、細胞内鉄含量を軸に、NASHにおける疾患特異的マクロファージ集団を同定し得る可能性を示唆する。以上を総合して判断すると、今年度の研究は、期待通り研究が進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に実施した2実験の遺伝子発現パターンから、マクロファージ鉄代謝特異的なシグナル因子の候補を抽出し、マクロファージの「鉄代謝―炎症調節機能―NASH」の分子機構に迫る。さらに、動物実験の結果が一定の結論に達し次第、ヒトNASH肝の病理切片の解析を開始する。得られた結果を基に、ヒトNASH肝におけるマクロファージの鉄代謝ステータスと炎症調節機能の特徴が、王冠様構造の数や線維化の進行度と関係するのかを明らかにすることを目指す。
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