2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子濃度場を検知し移動する,走化性機能を実装した細胞型分子ロボットの創出
Project/Area Number |
18J00720
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 佑介 東京工業大学, 情報理工学院, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 分子ロボティクス / 生物物理 / 液液相分離 / DNAナノテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分子ロボットが走化性を示すための要素技術を開発し,信号分子に応じて方向性を持って運動する「走化性機能を実装した細胞型分子ロボット」を構築することを目的としている.本目的を達成するため,本年度は方向性を持った運動のための「細胞型分子ロボットにおける非対称内部構造」の構築に注力した.具体的には,数十塩基の短鎖DNAで構成される分岐型DNAナノ構造を複数用い,それらの自己集合を利用した非対称構造の構築を試みた. 今年度の主成果として,DNAの塩基配列設計と溶液の温度制御により,DANナノ構造をマイクロサイズのハイドロゲルや液滴状に自己集合させることに成功した.さらに,非相補配列をもつ2種類のナノ構造とそれらを架橋するナノ構造を設計することにより,構成分子が二成分に相分離した非対称ゲル(ヤヌスゲル)の構築に成功した. また,想定を上回る成果として,DNAからなるマイクロ構造間の相互作用を塩基配列の合理設計により制御できることを見出すとともに,構築したDNAマイクロ構造において,非対称な物性の実現を示唆する成果も得ることができた.これらの成果は,DNAナノテクノロジーや生物物理におけるマイクロ構造の作製やその制御技術として新たな知見をもたらすものと考えている. 上記成果について学会にて発表し,優秀研究賞を受賞した.なお,これらの成果について,現在学術論文として報告するための準備を行っている.また,細胞型分子ロボットの構築に関連して,人工細胞研究における最新の進捗・動向について調査し,その成果を総説論文として報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の取り組みにより,研究計画にある非対称ゲルの構築に成功した.これにより,研究目的達成のための基礎を確立できたと考えている.当初計画していたゲルアクチュエータの開発においては,ポリマー分子とアクチュエータ分子の相互作用による非特異的凝集やDNAによるアクチュエータの運動阻害などが生じたことから,研究計画時の手法に加えて,他の手法の検討も必要であることが明らかとなった.一方で,想定を上回る成果として,マイクロサイズ非対称ゲルの構築の過程で,DNAナノ構造が液滴状に自己集合することを独自に発見し,さらに,マイクロ構造の物性も制御できる可能性を示唆する成果を得ることができた.これの成果により,研究計画当初では想定していなかった運動機構の創出が期待できる.以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,構築した非対称ゲル(または非対称液滴)を利用した細胞型分子ロボットの運動機構の確立に注力することを予定している.当初計画していたアクチュエータ分子を用いる手法が困難である可能性が示唆されていることから,他の手法の採用も視野に入れた研究の遂行を計画している.具体的には,計画時の手法を検討しつつ,DNA鎖置換反応を用いた形状変化による運動や,DNAマイクロ構造における物性の非対称性の活用による運動を検討する予定である.また,必要に応じて国外の研究室等を訪問し,本研究の遂行に有用な新たな技術を習得することも想定している.
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Research Products
(10 results)