2018 Fiscal Year Annual Research Report
Knot concordance in general 4-manifolds
Project/Area Number |
18J00808
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光樹 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 結び目コンコーダンス / 4次元多様体 / Heegaard Floer ホモロジー / ホモロジー同境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一目的は、Hom氏によって定義された結び目コンコーダンス群Cの商群C[ν+]の群構造を、結び目の種数によるフィルトレーションF[n]を介することで決定することであった。本年度はその達成に向け、まずC[ν+]を純粋代数的に定義される加群Cf[ν+]にまで拡張した。さらに、Cf[ν+]の代数的構造を精査することで、整数nでパラメータ付けされるコンコーダンス不変量の族G[n]を新たに構成した。このG[n]については、Cf[ν+]の異なる2元がG[n]によって区別されるほど強力な不変量であると予想している。本成果については、国際会議「East Asian Conference on Gauge theory and Related topics」およびジョージア工科大学のセミナーにおいて口頭発表を行っている。 また、本研究の基礎付けとなった、C[ν+]の代数的性質を用いて結び目が張る曲面の非存在性を主張した成果、およびC[ν+]上に部分順序を導入した成果をまとめた論文3篇のうち、2篇がそれぞれトポロジーの国際誌「Algebraic & Geometric Topology」および「Topology and its Applications」に掲載され、1篇は国際総合誌「Proceedings of the American Mathematical Society」に掲載受理されている。 さらに、本研究の発展的課題である、結び目コンコーダンスの観点とゲージ理論の技術を組み合わせる試みも成果を生んでいる。具体的な成果としては、任意のレンズ空間のホモロジー同境類の中に、結び目の手術で表せない既約な有理ホモロジー3球面が無限に存在することを示したことが挙げられる。本成果は論文にまとめ、現在専門誌に投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年次計画では、各部分群F[n]について個々に研究を進めていく方針であったが、実際の成果としては、C[ν+]の代数的拡張Cf[ν+]を得るという、大域的な成果が得られている。これは、今後の研究基盤となるような重要な成果といえる。また、Cf[ν+]上の不変量の族G[n]も同時に得られており、このG[n]によってCf[ν+]の群構造を決定できる可能性も見えてきた。これは当初の計画にはなかった大きな発見である。 さらに、本研究の観点とゲージ理論の技術を組み合わせる試みは、研究計画の段階では発展的課題として設定していたものであった。これが初年度から成功していることは、当初の予想を超えた進展である。 これらの状況を踏まえて、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、Cf[ν+]の異なる2元がG[n]によって区別されるという予想の証明に取り組む。さらに、G[n]は結び目のグリッド図式を介したコンピュータ計算が可能であるという予想も得られているため、その予想を証明し、具体的な結び目に対するコンピュータ計算を行う。 また、本研究の観点とゲージ理論の技術を組み合わせる試みについては、Heegaard Floerホモロジー理論の研究で培われた手法を、3次元多様体のインスタントン Floer鎖複体に応用することを試みる。その試みに成功すれば、チャーン・サイモンズ汎関数を介して、ホモロジー3球面の実数値ホモロジー同境不変量が構成できる見通しである。
|