2019 Fiscal Year Annual Research Report
Knot concordance in general 4-manifolds
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18J00808
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光樹 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 結び目コンコーダンス / ホモロジー同境 / Heegaard Floer ホモロジー / インスタントン Floer ホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に構成したコンコーダンス不変量の族G[n]のうち、最も基礎的な不変量となるG[1]の計算プログラムを、東京大学の佐野岳人氏との共同研究によって開発した。その応用として、結び目のUpsilon不変量や任意のDehn手術のd不変量といった重要な不変量が初めてコンピュータ計算可能になり、実際に11交点以下の全ての結び目についてそれらの不変量の値を決定することに成功した。不変量の族G[n]に関する基礎理論やG[1]の計算プログラムについては、第66回トポロジーシンポジウムをはじめ、複数の研究集会にて口頭発表を行った。 また、本研究におけるHeegaard Floerホモロジー理論についての洞察をホモロジー3球面のフィルター付きインスタントンFloerホモロジー理論に応用することで、明治大学の野崎雄太氏・東京大学の谷口正樹氏との共同研究として実数値のホモロジー同境不変量の族r_sを構成することに成功した。さらにその応用として、正定値および負定値の交差形式をもつ4次元多様体の境界とならないホモロジー3球面の無限族の構成や、正の1/n手術のホモロジー同境類が全て1次独立となるような結び目の無限族の構成など、ホモロジー同境群に関する複数の未解決問題の解決に成功した。これらの成果については、セントルイス・ワシントン大学のGauge Theory Seminarをはじめ、複数の研究集会において口頭発表を行った。 また、上述の研究で活用されている4次元多様体の変形操作やHeegaard Floerホモロジー理論を扱う技術が培われた、4次元球体内の曲面の二重分岐被覆と様々なコンコーダンス不変量との関係性の研究をまとめた論文が、数学の一般誌「Proceedings of the American mathematical Society」に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
結び目のUpsilon不変量やDehn手術のd不変量は、これまで数多くの未解決問題の解決に応用されてきた重要性の高い不変量であるため、これらの計算プログラムの開発に成功したことは、当初の計画になかった大きな成果である。 また、ホモロジー同境不変量の族r_sに関する一連の成果は、r_sの発見も含めて当初の研究計画にはなかった大きな進展である。特に、r_sによって解決された未解決問題は、現時点ではインスタントンFloer理論以外のFloer理論では別証明が不可能と思われるものであり、本研究の成果はインスタントンFloer理論のもつ可能性や世界観を開拓した重要なものと位置づけられる。 これらの状況を踏まえて、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度大きな成果を生んだr_sの理論をさらに発展させる。特に、フィルター付きインスタントンFloer鎖複体の間に「ν+同値」を模した同値関係を導入することで、インスタントンFloer理論におけるC[ν+]の類似物が構成できるという予想が得られているため、そのような同値関係の定式化を進める。さらにその応用として、本研究におけるr_sとセントルイス・ワシントン大学のAliakbar Daemi氏が構成したΓ(n)を同時に一般化するような不変量が構成できないか検証する。
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