2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヘビ類における採餌と警告色の生態的・進化的関連の解明
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18J00809
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
児島 庸介 東邦大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 警告色 / 体色進化 / 採餌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、伊豆諸島(神津島および八丈小島)、千葉県、沖縄県、およびマレーシア(サラワク州)において調査を行なった。伊豆諸島においてはオカダトカゲを対象にヘビの模型を提示する行動実験を行なった。ヘビが分布しない八丈小島のトカゲは、配色に関わらず、ヘビの模型に対して全く警戒行動を示さなかった。一方で、トカゲ食のヘビが分布する神津島では、トカゲは目立つ警告色の模型に対して警戒行動(尾振り行動など)を低頻度ながら示した。隠蔽的な茶色の模型に対しては警戒行動は見られなかった。これらの結果は、同所的に分布する捕食者の有無や捕食者の体色が、被食者の警戒行動に影響することを示唆しており、警告色のヘビは目立つことによって餌動物に警戒されやすくなるという本研究の仮説を支持した。千葉県および沖縄県においてはカエル類にヘビの模型を提示する行動実験を行なった。ヘビの模型を提示されたカエルが示す不動行動(警戒行動)の頻度は、警告色の模型の場合と茶色の模型の場合で有意な差はなかった。カエル類は動かないヘビの模型に対してあまり警戒していない可能性が考えられたため、動きも考慮した行動実験の方法について検討を行った。 本研究では、警告色と採餌生態の進化的相関を検証するため、系統比較研究を行う。本年度は、3,700種以上が記載されているヘビ類の体色と採餌生態に関するデータベースを構築し、データの集積を進めた。また、系統樹の再構築に用いるシーケンスデータの集積を進めた。データは文献調査によって収集したほか、一部の種については新規の調査を行なった。特に、マレーシア(サラワク州)における調査によって、先行研究の少ない熱帯産ヘビ類の採餌生態に関するデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
警告色は餌となる動物に認知されることで採餌効率の低下を招くという本研究課題の仮説を検証するため、ヘビ類の模型を餌動物に提示する行動実験を行い、トカゲ類に関しては、仮説を支持する結果が得られている。カエル類に関しては、模型の色を問わず明確な警戒行動がみられなかったが、実験手法の確立に向けて有益な情報が得られ、来年度には手法を改良した行動実験に着手できる。本研究課題では、警告色の進化が採餌生態によって予測できるかを検証するため、系統種間比較研究を行う。本年度は解析に必要なデータベースを構築し、文献調査により、データベース上にヘビ類の体色、採餌生態の情報および系統解析のためのシーケンスデータを集積する作業を進めた。ヘビ類は種数が多いため情報収集には時間がかかるが、作業は順調に進んでいる。また、文献情報が不足している熱帯産の種の一部について、マレーシアにおける調査によって食性と採餌行動のデータが得られた。以上の通り、本年度は行動実験と系統種間比較の両方で着実に成果が得られ、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
食性に応じた警告色のコストを検証するため、ヘビ類の餌となる小型脊椎動物に配色が異なるヘビの模型を順に提示して行動を解析し、警告色を持つことで様々な餌動物にどの程度避けられやすくなるかを定量化する。これまでの行動実験において、トカゲ類については仮説を支持する結果が得られているため、実験手法をさらに改良した上でサンプル数を増やす。これまでの実験において、カエル類は動かない模型に対して明確な警戒行動を示さなかった。今後は、より自然に近い条件にするため、動くヘビの模型を用いて行動実験を行う。 体色と採餌生態の進化的相関を検証する解析のため、ヘビ類のDNA塩基配列・体色・採餌生態の情報を集積する。体色と採餌生態の情報は文献調査により収集する。塩基配列の情報はGenBankなどのデータベースから取得する。これらの情報収集はこれまでも行なっており、総種数が3,700を超えるヘビ類のできるだけ多くの種を解析で扱えるよう、継続して情報収集を進める。先行研究から採餌生態や塩基配列の情報が得られず、かつ解析上重要な種については、新規の調査を行ってデータを得る。野外調査と標本調査によって研究の遅れている熱帯産のヘビ類の食性のデータを得る予定である。また、糞中DNAを用いた食性分析について手法を検討する。
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