2018 Fiscal Year Annual Research Report
JAG1-Notchシグナル活性化による早期細胞老化と微小環境機構の解明
Project/Area Number |
18J00861
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
眞野 恭伸 千葉大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 癌 / 早期細胞老化 / Notchシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
正常細胞は、癌遺伝子の活性化など様々なストレスにより永久的に細胞増殖を停止する早期細胞老化機構を備えており、この早期細胞老化機構の破綻が様々な癌と深く関与する。これまでの発癌分子機構の解析において複数の癌ドライバー遺伝子が同定されたが、真に発癌に重要な分子機構の解明には至っていない。 本研究では、早期細胞老化機構におけるJAG1-Notchシグナルの活性化の分子機構とその老化細胞が周りの細胞に及ぼす微小環境機構を解明する事で、JAG1-Notchシグナルの癌抑制防御機構並びに癌分子機構を理解し、新規癌治療方法を開発するための研究基盤を確立する事を目的としている。2018年度は研究計画に基づき、(1)Notchシグナル活性化・非活性化細胞の共培養による老化誘導機構の解明、(2)NOTCH1~4遺伝子における下流標的因子の層別化、について解析を行った。 (1)では、周辺の正常細胞への老化誘導が、細胞間による直接的なNotchシグナルの活性化によるものなのか、間接的に老化誘導されるのかを明らかにするために、培養液上清による培養実験及びリコンビナントJAG1タンパクの添加による細胞増殖実験を行った。培養液上清による培養実験では、JAG1を強制発現させた老化細胞の培地上清による細胞増殖阻害効果は認められなかった。一方でリコンビナントJAG1タンパクの添加による細胞増殖実験では、濃度依存的に細胞増殖阻害が認められた。さらにJAG1活性化老化細胞と正常細胞を共培養した結果、JAG1活性化細胞の周囲の正常細胞は離れた正常細胞と比べて有意に老化しており、JAG1活性化細胞は距離依存的に正常細胞を老化させる事が明らかとなった。 (2)では、NOTCH1-4の細胞内ドメインをそれぞれ単独で過剰発現させ細胞増殖能を解析した。その結果、NOTCH1-4全ての細胞内ドメインにおいて増殖阻害効果が認め、さらに細胞老化の指標となるSA-β-gal活性も有意に上昇していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化細胞の培地上清による細胞増殖試験では、細胞増殖阻害効果は認められなかったが、リコンビナントJAG1タンパクによる阻害効果が認められた。またNOTCH1-4遺伝子の全ての細胞内ドメインに増殖阻害機能がある事を明らかにした。そのため2018年度に予定していた研究計画は、概ね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、(1)に関しては、JAG1-Notchシグナル活性化細胞が周辺の正常細胞に老化を誘導する分子機序を明らかにするため、シングルセルRNA-Seqによる解析を行う。(2)に関してはRNA-Seq解析を行う事で、直接の下流標的遺伝子を明らかにする。そしてNOTCH1-4遺伝子の下流標的の違いを解明する事で、NOTCH1-4遺伝子における下流標的因子の層別化を行う予定である。また(3)Notchシグナル活性化癌の浸潤転移をモデルとした共培養システムの確立とその微小環境機構の解明、(4)Notchシグナル活性化癌細胞株・正常細胞の共培養による微小環境機構の解明、についても実施していく予定である。
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Remarks |
平成31年3月4日 千葉大学亥鼻地区で開催された2020年度採用分 日本学術振興会特別研究員公募説明会にて発表。
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