2018 Fiscal Year Annual Research Report
信念と合意性の過大推測がもたらす社会変化に関する実証・理論研究
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18J00870
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
稲葉 美里 関西大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 均衡選択 / 社会的ジレンマ / 協力 / 実験室実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、内生的な均衡の移行を可能にするメカニズムを、人間の心理・行動傾向が生む選択的相互作用という観点から明らかにすることにある。 本年度はまず、実験環境を整備した上で、非効率的な均衡から効率的な均衡への移行を検討するのに適した実験状況を選別することを予定していた。所属機関の実験室運営母体の研究員となることで、ズムーズに実験を実施する環境を整えることができた。その結果、夏には予備的な実験を行うことができた。 非効率的な均衡から効率的な均衡への移行を検討するためには、複数の均衡が存在し、そのうち効率の悪い均衡に人々が固着してしまう実験状況を見つけることが必要である。そこで入れ子型社会的ジレンマゲームを用いた実験状況を設定しこれを検討した。実験の結果、非効率的な均衡が選択される状況が一部のグループで観察された。 次年度は、実験状況を調整した上で再度実験を行い、非効率的な均衡に固着する状況を実験室で再現することを試みる。非効率的な均衡への固着が生じる状況が確定後、予定通り自己選択のパラダイムを導入し、効率的な均衡への移行が可能になるかどうかを検討する。また、入れ子型社会的ジレンマゲームにおいて協力行動が均衡となることを明示的に示した理論研究は存在しない。したがってこのことを明らかにするためのシミュレーションを行う。それを元に、均衡移行において信念と心理傾向が果たす役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入れ子型社会的ジレンマゲームを用いた実験状況を設定し、均衡選択が生じる実験状況を設定した。実験の結果、非効率的な均衡が選択される状況が一部のグループで観察され、当初の目的を達成することが出来た。実験状況を調整した上で再度実験を行う必要はあるが、非効率的な均衡に固着する状況に近い状況を設定することに成功した。よって一年目の進展は期待通りであると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
実験状況を調整した上で再度実験を行い、非効率的な均衡に固着する状況を実験室で再現することを試みる。非効率的な均衡への固着が生じる状況が確定後、予定通り自己選択のパラダイムを導入し、効率的な均衡への移行が可能になるかどうかを検討する。 また、入れ子型社会的ジレンマゲームにおいて協力行動が均衡となることを明示的に示した理論研究は存在しない。したがってこのことを明らかにするためのシミュレーションを行う。それを元に、均衡移行において信念と心理傾向が果たす役割を明らかにする研究2を開始する。
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Research Products
(3 results)