2019 Fiscal Year Annual Research Report
重力マイクロレンズ法による惑星存在率の銀河系内分布及び主星質量依存性の推定
Project/Area Number |
18J00897
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越本 直季 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重力マイクロレンズ / 太陽系外惑星 |
Outline of Annual Research Achievements |
重力マイクロレンズ法では、惑星と主星の質量比は普遍的に測定されるが、質量を測定するためには特別な観測量が必要となる。特別な観測量の一つに、惑星系の主星の明るさがある。重力マイクロレンズ法による惑星系は、星が密集した銀河中心方向に位置するため、惑星系の主星の明るさの測定には、地上大望遠鏡を用いた高空間分解能撮像が必要となる。従来は、高空間分解能撮像を持ってすれば、ターゲットの明るさに関係のない星の明るさ(コンタミ)が混じる確率は無視することができ、惑星系の主星の明るさを測定できると考えられてきた。私は、この考えの根拠となる論理が誤っていることを指摘し、コンタミの確率を考慮して、惑星系の主星の明るさの確率分布を計算できる新たなベイズ推定法を確立した。この手法及び、過去のイベントへの適用結果を論文にまとめ、The Astronomical Journalに投稿・受理された。また、他の研究者がリードする研究にも本手法を適用し、惑星系の高空間分解能撮像画像に含まれるコンタミの確率を計算した(Blackman et al. 2020, Nagakane et al. 2019, Fukui et al. 2019)。特に、Fukui et al. (2019)では、日本のアマチュア天文家が偶然発見した銀河系中心と反対方向で起きた非常に珍しいマイクロレンズ現象に本手法を適用した。その結果、コンタミの確率が非常に低いことがわかり、マイクロレンズ法による最も明るい主星を持つ惑星系であることを明らかにした。この結果を連名でプレスリリースをした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は重力マイクロレンズ法により、雪線以遠の惑星存在率が、主星の質量や銀河系内の場所にどう依存するか初めて解明することを目的とする。惑星系の主星の明るさの情報を高空間分解能撮像結果から正しく引き出す方法が必要であるが、本年度はこの手法を確立した。 また、概要欄には書ききれなかったが、もう一つ、重要となる、サンプルに用いる惑星系の検出効率の補正の仕方も確立した。これらの手法を用いて、最終年度には、研究目的である、惑星存在率の主星質量・銀河系内の場所への依存性を見積もる予定であり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、銀河系の星の分布のモデルから予測されるマイクロレンズのパラメーターの確率分布と、実際に惑星マイクロレンズイベントにおいて観測されたそれらのパラメーターの分布を比較することによって、研究目的を達成する予定である。2018年にヨーロッパの超高精度位置測定衛星Gaiaの観測結果がリリースされ、当初使う予定であった銀河系のモデルと分布を比較した結果、合わない部分があることがわかった。そのため、今後は、まずこの銀河系モデルのアップデートを行い、その後、上記の今年度確立した手法と組み合わせることにより、本研究目的を達成する。
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Research Products
(13 results)