2019 Fiscal Year Annual Research Report
Navier-Stokes方程式の自由境界問題の解のダイナミクスの数学解析
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18J01068
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
榎本 翔太 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 非圧縮粘性流体 / Rayleigh-Plesset方程式 / Navier-Stokes方程式 / 安定性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3次元の単一気泡周りにおける非圧縮粘性流体の線形安定性について解析を行った。単一気泡の動きはRayleigh-Plesset方程式によって記述され、本年度は単一気泡周りの流体の線形安定性を考察することによって気泡が消滅する状況下においてRayleigh-Plesset方程式が支配的であることを調査し結果を得た。 Rayleigh-Plesset方程式は非圧縮粘性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式の移動境界問題の一つの球対称解(Rayleigh-Plesset解)から導出することができる。本研究ではこのRayleigh-Plesset解に対して動径方向成分が0である特別な攪乱を与え、摂動の方程式の線形化問題の解析を行った。 Rayleigh-Plesset解に対し特別な攪乱を与えた場合、Navier-Stokes方程式の線形化問題の圧力が0となり問題は放物型方程式の過剰決定系となる。可解性はRayleigh-Plesset解の性質と放物型方程式に対する可解性理論を組み合わせることによって証明を行った。特にcut-off関数によって遠方で発散する項を気泡周りの有界な領域に抑え込むことによって放物型方程式の可解性理論を援用することができ、局所解を持つことが示せた。さらにRayleigh-Plesset方程式の解が初期状態に指数減衰する場合、過剰決定系は時間大域解を持ち、その解は熱核と同じ減衰率を持つことを示した。 また、Rayleigh-Plesset方程式の解が0へ減衰する場合、Rayleigh-Plesset方程式の解の減衰率を算定し、その際にRayleigh-Plesset解周りの線形化問題の時間増大率を求めた。この増大率はRayleigh-Plesset解の増大率よりも小さく、気泡が消滅する場合に関して動径方向成分が主要部となる結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の当初から取り組んでいる斜面を流れる流体に対する評価に関する研究に関して波数分解法によって一様評価を得る研究を進めているが、その進捗は想定よりやや遅れている。特に臨界固有値周辺における評価に関しては直接一様評価を得る方法を模索する一方で関連方程式であるOrr-Zommerfeld方程式の評価を援用することで基礎方程式の一様評価を得る方法を試みたが現在まで一様評価は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている単一気泡のダイナミクスに関する非圧縮粘性流体に対して一般的な条件の下で安定性解析を行う。現在までに得られている結果では特別な摂動によって問題の本質が放物型方程式の過剰決定系の可解性に移行されたが、一般的な摂動を課した場合、問題はNavier-Stokes方程式の外部問題の安定性解析に依る。しかし、単一気泡の挙動はRayleigh-Plesset解によって支配されており、この解の周りの可解性はMiyakawaらによる既存の結果を援用できる可能性がある。可解性についてはNavier-Stokes方程式の外部問題の既存の結果からの援用を試みる。さらにキャビテーションが起こる場合の解析に関しては特別な摂動の場合の結果を参考に得られる結果を予想し、Navier-Stokes方程式の解の評価を得る方法を模索する。
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Research Products
(4 results)