2019 Fiscal Year Annual Research Report
台湾産マンネングサ属の平行適応放散をモデルにした網羅的な適応進化プロセスの検証
Project/Area Number |
18J01069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊東 拓朗 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 適応放散 / 適応進化 / 平行進化 / 台湾 / 高山 / 系統地理 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンケイソウ科マンネングサ属は東アジア地域を一つの多様性の中心に持ち,中でも大陸島台湾の高地環境おいて,劇的に異なる光・水分環境に進出し,種多様化を遂げている.これまでの申請者の研究から,台湾固有のマンネングサ属種は2系統存在し,各系統で異なる光・水分環境に生育する種が急速に進化し,かつ2系統で独立して類似生態シフトと適応形質(葉形態及び光合成特性)を獲得した急速な種多様化(平行適応放散)を遂げていたことが明らかになっている.しかしながらその種分化や適応放散プロセスの解明には至っていないため,本研究では当該種群をモデルとした,網羅的な環境-形態-生理-ゲノムデータに基づく非生物環境への適応放散/進化メカニズムの解明を目的として研究を進めている. 今年度は設置済みの温度,湿度,照度計から環境データの収集を行い,各生育環境の評価ができつつある.ゲノム解析については,9種のゲノムリシーケンスを行った.リシーケンスデータを近年発表された同属種(Sedum album)のリファレンスゲノム(Wai et al. 2019)にマッピングしてデータ解析進めているが,マッピング率が低かった.別途,9種のリシーケンスデータから,葉緑体ゲノムを決定した.来年度は台湾産種1種について従来の計画通り,追加のロングリード配列取得を行うことでリファレンスゲノムの構築を行い,さらに残りの台湾産4種についてもリシーケンスを進め,集団動態解析や自然選択を受けた遺伝子座の検出などを試みる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
台湾産マンネングサ属各種の生育環境の温度,湿度,照度の環境特性が明らかになりつつある.適応形質について,これまで調査してきた葉形態や光合成様式に加え,化学成分や根形態もまた適応形質である可能性が示されている.ゲノム解析については,近縁種のリファレンスゲノムにリシーケンスデータをマッピングしたところ,不具合が生じたため,方策を検討中である.また,得られたリシーケンスデータから,別途9種の葉緑体ゲノムを決定することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスの影響により海外渡航制限がなされているため,台湾での現地調査が必要である生育環境の評価については,見通しが立っていない.規制が解除され次第,早急に現地調査を行う予定である.ゲノム解析については,台湾産種1種について追加でロングリードのゲノムシーケンスを行うことでリファレンスゲノムを構築する予定である.並行して残りの台湾産マンネングサ属4種についてもリシーケンスを行う予定である.これらのデータを統合して,平行適応放散の進化要因を検証していく予定である.
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Niche conservatism promotes speciation in cycads: the case of Dioon merolae (Zamiaceae) in Mexico2020
Author(s)
Jose Said Gutierrez-Ortega, Maria Magdalena Salinas-Rodriguez , Takuro Ito, Miguel Angel Perez-Farrera, Andrew P. Vovides , Jose F. Martinez, Francisco Molina-Freaner, Antonio Hernandez-Lopez, Lina Kawaguchi, Atsushi J. Nagano, Tadashi Kajita, Yasuyuki Watano, Takashi Tsuchimatsu , Yuma Takahashi, Masashi Murakami
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Journal Title
New Phytologist
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Radiation history of Asian Asarum (sect. Heterotropa, Aristolochiaceae) resolved using a phylogenomic approach based on double-digested RAD-seq data2020
Author(s)
Yudai Okuyama, Nana Goto, Atsushi J. Nagano, Masaki Yasugi, Goro Kokubugata, Hiroshi Kudo, Zhechen Qi, Takuro Ito, Satoshi Kakishima, Takashi Sugawara
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Journal Title
Annals of Botany
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 多様な環境に適応したキク科ヤマジノギク種群および近縁種の遺伝的関係2020
Author(s)
中川 さやか, 土畑 重人, 山﨑 皆実, 阪口 翔太, 倉田 正観, 伊東 拓朗, 永野 惇, 瀬戸口 浩彰, 井鷺 裕司, 副島 顕子, 伊藤 元己
Organizer
日本植物分類学会第19 回大会
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[Presentation] 絶滅危惧種の分布フロント個体群を対象としたゲノムワイド解析2020
Author(s)
芝林 真友, 伊東 拓朗, 國府方 吾郎, 阿部 篤志, 横田 昌嗣, 遊川 知久, 陶山 佳久, 内貴 章世, 栗田 和紀, 永野 惇, 本庄 三恵, 井鷺 裕司
Organizer
日本生態学会第67 回大会
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