2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18J01082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
任 龍フン 京都大学, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 資産価格バブル / 金融市場の不完全性 / 労働市場 / 経常収支 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目の目標は、昨年度に構築した動学的一般均衡モデルを用いて、バブルの発生条件、定常状態における各マクロ変数の値、動学的性質を明らかにすることであった。動学的一般均衡モデルは"Asset Bubbles, Unemployment, a Financial Crisis”を基本にして、新しく金融市場の不完全性を明示的に導入し、2カ国モデルへの拡張を行った。この拡張によって、バブルや両国の労働市場の環境が、どのように各国の経常収支と失業率に影響を及ぼすのかを分析することが可能となった。 重要な結果として、両国の労働市場の環境やバブルの有無、金融市場の発展の度合いは経常収支を通じて、両国の資本蓄積、失業率、労働市場の逼迫率に影響を及ぼすことを明らかにした。特に経常収支や各マクロ経済変数は、金融市場の発展の度合い、賃金交渉力、失業手当て、求人コストといったパラメータで特徴付けられること明らかにした。またバブルが資本蓄積を促進して経済成長を促す効果は、両国の資産の動きと労働市場に影響を受けることも明らかにした。 また今年度は、昨年度に構築した投資の不確実性に着目したバブルの研究をより発展させ、様々な問題への拡張を行った。昨年度に構築した理論モデルは内生的成長モデル使用したが、ほとんどの結果は外生的成長モデルでも成立することを示した。また実証的データから指摘されている、バブルが発生している時のGDPに対する資産比の上昇を、モデルの中で確認することができた。また構築した理論モデルは、マクロ経済モデルで分析の簡単化のためによく用いられる対数効用関数を用いたが、より一般的な効用関数を用いても、基本モデルの結果の多くが満たされることも確認した。よって基本モデルの頑健性を強い形で確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画に以上の進展していると言える。特に昨年度に構築した投資の不確実性に着目したバブルの研究を当初の計画した以上に発展させることができた。具体的には以下の4つの点である。 (1)新古典派生産関数を用いた外生的成長モデルのへの拡張 (2)エプスタイン・ジン型の効用関数への拡張 (3)財の種類拡張型の内生的成長モデルへの拡張 (4)経済全体に影響を与えるマクロショックの導入 特に、財の種類拡張型の内生成長モデルへの拡張と、マクロショックの導入は当初予期していなかった拡張であり、基本モデルが経済の様々な問題の多くに適用できることを示すことができた。さらに財の種類拡張モデルでは、これまでにできなかった経済政策の分析も新しく行えるようになった。特に経済にバブルが経済に発生しているか否かで、経済成長を促進するような経済政策の効果が全く違うことを明らかにできた。これはバブルが経済政策の効果をより増幅させるような効果があることを示しており、当初とは違う効果を経済に及ぼす可能性があること示している。現在この拡張も今年度の研究を遂行してく中で、重要な示唆を持っているので並行して進行していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、まずバブルと国際的労働市場を分析する理論モデルの数値計算を持ちたシミュレーションを計画している。特に本研究では、2カ国モデルを用いているため、モデルのパラメータの数は比較的多くなっているため、理論モデルを用いたシミュレーションが必要不可欠となっている。特に経常収支に両国の労働市場の環境がどのように影響を及ぼすのかを、シミュレーションで明らかにして、理論モデルが現実のデータをどの程度説明できるのかを確認を行う。その結果をもとに、バブルの崩壊が、どのように各国に波及して失業率に及ぼすのかを明らかにする。またバブルの崩壊の影響を抑える経済政策も分析することを予定している。より具体的には、本研究では金融市場と労働市場の2つの不完全性を扱っているので、そのような不完全性に影響を与える経済政策の効果の検討することを計画している。 また、昨年度に構築した投資の不確実に着目したバブルの研究も、昨年度に確認できた様々な拡張可能性にもとづき、基本モデルの結果がどこまで一般的に成立するのかを確認することを計画している。また拡張して結果もそれぞれ独立した研究として新しくまとめることを計画している。
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