2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pathogenesis of perinatal encephalopathy associated wtih dysfunction of glymphatic system
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18J01110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小野田 淳人 名古屋大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 胎児・新生児医学 / 中枢神経系 / 脳脊髄液 / モデル動物 / プロテオミクス / 周産期脳障害 / 脳虚血 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目標は、脳脊髄液の流出入機構に着目した周産期脳障害の病態解明である。初年度では、研究全体の基盤となる「周産期脳障害のモデル動物の作製とその評価」を中心的な研究課題として取り組んだ。妊娠しているモデルラットを用意し、吸水により膨張するアメロイドコンストリクターを子宮動脈および卵巣動脈に装着することで、胎児への血流を緩徐かつ持続的に抑制できることを見出した。また、アメロイドコンストリクターの内径を変えることで、重症度を段階的に制御できることも明らかになり、本手法を用いることで軽症から重症の周産期脳障害のモデル動物を取得することに成功した。さらに、得られたモデル動物の形態学的表現型、行動学的表現型、組織病理学的変化について評価した結果、実際の周産期脳障害を高く再現していた。本モデル動物の作製法に関しては、国際誌への掲載に向け、論文投稿の準備中である。現在は、作製したモデル動物から脳脊髄液を採取し、その脳脊髄液中に含まれる生体分子の網羅的解析を進めている。分析の過程ではあるが、周産期脳障害に伴って変動する特定の生体分子を捉えることに成功した。この生体分子が周産期脳障害の病態や機序の解明に向けた鍵となる因子だと考えられる。 この他にも、フランスのエクス=マルセイユ大学およびスイスのジュネーヴ大学との共同研究を行い、電気生理学的解析を用いることで、周産期脳障害に起因する中枢神経機能の変化についての研究も進めている。互いの技術・研究成果の交換は、研究を加速させ、当初想定していた計画以上の進展をもたらした。 以上、1年目に得られた研究成果は、周産期脳障害の病態解明に向けた基盤となる重要な知見である。本研究成果を基に、次年度では周産期脳障害モデル動物における「脳脊髄液中を循環する生体分子プロファイルの分析」と「脳脊髄液の脳内への流出入の評価」を主たる課題として行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展していると言える理由は、1年目終了の段階で、目標であった周産期脳障害の新規モデル動物の作製に成功し、安定してモデル動物の供給を可能にしたことに加え、そのモデル動物の表現型の評価を完了させたからである。予定よりも早い段階でモデル動物の安定供給が可能になったことから、2年目に行う予定だった脳脊髄液中の生体分子プロファイルの取得を前倒しして終了させ、現在はその分析を進めている。 ここまで進んだ要因として、確立と技術習得に時間を要すると想定されたモデル動物の作製を、アメロイドコンストリクターの活用により短時間かつ平易な手法にしたことにある。さらに、この技術を応用することで、狙った重症度のモデル動物を得ることも可能となり、周産期脳障害のモデル動物供給の安定化と迅速化に繋がった。また、モデル動物の表現型の評価にも同様に長い時間を要すると想定されていたが、所属研究機関の他の研究者・技術者と連携することで、高効率化を図り、想定よりも早い段階で評価を終えることができた。 上記の研究成果に加えて、当初は計画に含まれていなかった国際共同研究を行うチャンスを得ることができ、そのおかげで、所属機関が持っていない技術を活用した分析を行うことができた。互いに異なる情報・技術を持ち寄って、同じ目標である「周産期脳障害の病態解明」に向けた研究を協力して進めることで、より明確化した研究方針が定まり、研究そのものが大きく加速したことを強く感じている。これもまた、当初の計画以上に進展していると言える理由である。 以上を踏まえ、1年目では、本課題の実施期間である3年間で全研究計画を完遂するために必要な成果を十二分に得ることができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、周産期脳障害の新規モデル動物の安定供給に成功し、そのモデル動物の脳脊髄液から生体分子のプロファイルを得るに至った。2年目以降は、その得られたプロファイルの分析を進めることで、周産期脳障害の病態解明に向けた鍵となる単一の分子あるいは複数の分子群を同定し、その経時的変化ならびに局在について、定量的発現解析及び組織学的解析を用いることで明らかにする。また、脳脊髄液の脳内への流出入の変化について評価するべく、各種可視化試薬を脳内へ投与する技術の習得と投与する試薬の最適化を行う。技術習得と試薬の最適化を終えた後、脳脊髄液に流出入の評価を行うことで、周産期脳障害に伴う脳脊髄液の循環の異常を捉える。とくに、脳脊髄液の流出入に顕著な異常を認める領域と先のプロファイル解析により見出した生体分子の局在を併せて評価することで周産期脳障害の初期病変を見出す。その後、見出した病変領域において、in situスペクトル分析を用いて病変部位にある生体分子の種類や状態を評価することで病態解明へと繋げる。また、プロファイル解析や初期病変の領域で顕著な変動を示した生体分子の中でも、とくに中枢神経系で特異的に発現しているものは、周産期脳障害の早期診断や予測因子、あるいは治療マーカーとなりうる。そこで、見出された生体分子をバイオマーカー候補とし、モデル動物の血清中濃度を測定する。以上の方法を用いて、周産期脳障害の初期病変ならびに疾患発症のカギとなる生体分子を明らかにし、その病態および機序解明へとつなげる。さらに、本疾患を早期に診断ならびに根本的に治療する方法を本研究課題の中で検討する。そして、これまでで得られた研究成果をすべて論文にまとめて公表する。
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[Journal Article] Associations Between Metal Levels in Whole Blood and IgE Concentrations in Pregnant Women Based on Data From the Japan Environment and Children’s Study2019
Author(s)
Tsuji M, Koriyama C, Ishihara Y, Yamamoto M, Yamamoto-Hanada K, Kanatani K, Bamai YA, Onishi K, Senju A, Araki S, Shibata E, Morokuma S, Sanefuji M, Kitazawa H, Saito M, Umezawa M, Onoda A, Kusuhara K, Tanaka R, Kawamoto T; Japan Environment & Children’s Study Group.
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Journal Title
Journal of Epidemiology
Volume: 29
Pages: 478~486
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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