2019 Fiscal Year Annual Research Report
歩行制御の中枢神経機構の解明~機械学習に基づく大脳皮質-脊髄連関の包括的理解~
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18J01286
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
横山 光 東京農工大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 歩行 / 機械学習 / 大脳皮質 / 脊髄 / 脳波 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、機械学習を用いた手法により歩行制御の中枢神経機構を明らかにすることを目的としている。特に、大脳皮質活動と脊髄活動の関係性に着目している。
本年度は、まず筋シナジー活動と脳波活動の関係性を機械学習手法を用いて検討する研究を進めた。この研究では、ヒトの脊髄に存在する歩行のための神経回路を評価するために、複数の筋から取得した筋電図に対し統計的手法を用いて、筋シナジーと呼ばれる複数筋の共働筋活動パターンの抽出を行った。この筋シナジーは、脊髄神経回路により生成されることが示唆されている。一方、大脳皮質活動は脳波を計測することにより取得した。歩行時に筋電図、脳波を計測し、筋シナジー活動と脳波活動の関係性を検討した。具体的には、脳波パターンから筋シナジー活動パターンを予測するブレインデコーダーを機械学習手法により作成した。もし、脳波情報に筋シナジー制御情報が含まれているなら、ブレインデコーダーに脳波情報を入力すると高精度に筋シナジー活動を予測可能なはずである。結果として、脳波情報から筋シナジー活動情報が予測可能なことが示された。この結果を、国際学術誌iScienceに投稿し、受理された。
また、2019年4月から歩行時の大脳皮質・脊髄連関の背後の神経メカニズムをより詳細に調べることを目的に、神経疾患患者を対象とした研究を行うためにトロントリハビリテーションセンターとの共同研究を始めた。当該年度はパーキンソン病患者における歩行時の筋活動異常に着目し、歩行時の大脳皮質-脊髄連関への中脳ドパミン系が与える影響を検討した。結果として、パーキンソン病患者は歩行時の筋活動の異常が認められ、さらに脳波と筋電図の同期性が健常者より低いことが明らかとなった。大脳皮質-脊髄連関には中脳ドパミン系による大脳皮質の活性化が重要な役割を担うことが推察された。研究成果は国際誌に投稿され、改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記したように、健常者における研究にて、脳活動と筋シナジー活動のデコーディング結果から歩行時の大脳皮質-脊髄活動連関を示すことができた。この結果は当該分野において国際的に高い評価を得ている学術誌に掲載され、学術的な価値を認められたといえる。 また、パーキンソン病患者を対象とした研究においても、大脳皮質-脊髄連関におけるう中脳ドパミン系による大脳皮質の活性化の重要性を示唆する結果を得ることができた。この研究結果も国際学術誌に投稿し、改訂中であり、来年度早期における受理が想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は脊髄損傷患者を対象に、歩行時の大脳皮質-脊髄連関における脊髄の役割について研究を行う。トロントリハビリテーションセンターにおける倫理申請、機材準備、被験者リクルートの準備はすでに完了しており、年度の初めから歩行実験を開始することを予定している。
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Research Products
(6 results)