2019 Fiscal Year Annual Research Report
Time-Resolved Ultraviolet Resonance Raman Study of Photochemical Reaction of UV-B Photoreceptor Proteins
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18J01307
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田原 進也 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 紫外光受容タンパク質 / 紫外共鳴ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
紫外光受容タンパク質UVR8の収量を向上させるため、合成条件を検討した。既報ではタンパク質発現に大腸菌BL21(DE3)株が用いられた。近年、毒性タンパク質に対して耐性がある大腸菌C43(DE3)株が広く用いられている。この株を用いてUVR8を発現させたところ、収量が約2倍に向上した。 野生型UVR8および285番目のトリプトファン(W285)をフェニルアラニンおよびアラニンに置換したW285F,W285A変異体の定常紫外共鳴ラマンスペクトルを測定した。野生型UVR8は紫外光を吸収すると二量体から単量体に解離するが、W285Fは二量体のまま解離を起こさず、W285Aは二量体ではなく単量体で存在する。このようにW285の変異によって光解離の特性が変化することから、W285が光解離に重要な役割を担うと考えられている。そこでUVR8の二量体および単量体におけるW285の紫外共鳴ラマンスペクトルを取得し、W285が特異構造を持つかどうか調べた。UVR8二量体におけるW285の紫外共鳴ラマンスペクトルを得るため、野生型UVR8二量体とW285F変異体の定常紫外共鳴ラマンスペクトルを測定し、それらの差スペクトルを計算した。得られたスペクトルは、野生型UVR8二量体のトリプトファンのスペクトルとよく似ていた。このことはUVR8二量体のW285の構造がUVR8中に存在するトリプトファンの平均的な構造とよく似ていることを意味する。またUVR8単量体におけるW285の紫外共鳴ラマンスペクトル得るため、野生型UVR8単量体とW285A変異体のスペクトルを測定した。W285A変異体では野生型UVR8よりもトリプトファンが1残基少ないにも関わらず、トリプトファンの共鳴ラマン信号強度がより強く観測された。このことからW285A変異体は野生型UVR8とは高次構造が大きく異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に野生型UVR8および各種変異体の定常紫外共鳴ラマンスペクトルを測定し、さらに野生型およびW285F変異体のマイクロ秒時間分解紫外共鳴ラマンスペクトルを測定する予定であった。前者の定常スペクトルの測定は完了し、W285の構造がUVR8中のトリプトファンと大きく変わらないことが結論付けられた。一方、マイクロ秒時間分解スペクトルの測定を終えることができなかった。この理由として、並行して行っていたミオグロビンのピコ秒ダイナミクスの研究が大きく進展し、追試や論文執筆に多くの時間が必要となったためである。ミオグロビンの研究により、ピコ秒紫外共鳴ラマン分光測定の技術を習得できたので、来年度のUVR8のピコ秒時間分解スペクトル測定に活かす。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型およびW285F変異体のマイクロ秒・ピコ秒時間分解紫外共鳴ラマンスペクトルを測定する。本年度はこれらタンパク質の収量を向上させることができたものの、これ以上の収量増大は見込めないと判断した。しかし現段階の収量は依然として多数の遅延時間での測定には不十分である。このため、UVR8が二量体解離に重要な構造をとると思われる遅延時間のスペクトルのみを重点的に積算し、高品質なスペクトルを得る予定である。これによりUVR8の過渡的な構造変化およびW285の電子状態および構造変化を明らかにする。これらの情報を基にUVR8が二量体解離を起こす分子機構について考察する。
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Research Products
(2 results)