2018 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類にみられる種内色覚多型の維持メカニズムの解明
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18J01352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 真理 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 色覚 / 色覚多型 / 霊長類 / 広鼻猿類 / 遺伝子 / 種内変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類にみられる同一種内での色覚多型現象の至近要因が解明されつつある一方で、自然環境下での3色型色覚や2色型色覚の適応的意義については結論が出ていない。本研究では、同一種内に2色型色覚と3色型色覚の個体が混在する広鼻猿を対象として、それぞれの色覚型の優位性を検証し、同一種内で色覚多型が維持されるメカニズムを解明することを目的としている。具体的には、昼間と薄明での果実の採食効率における3色型色覚の優位性(果実説の検証)、および、隠蔽的捕食者であるヘビの検出における2色型色覚の優位性(捕食者発見効率の検証)について調べた。 本年度は、コスタリカ共和国のサンタ・ロサ国立公園に生息する野生のノドジロオマキザルを対象としたフィールドワークをおこなった。人づけされたノドジロオマキザルの3群を行動観察の対象とし、その中からオトナメスとオトナオスの合計38個体を採食行動の観察対象とした。観察バイアスを避けるために、各観察対象個体の色覚型は分からない状態で行動観察をおこなった。観察対象個体が果実を採食した場合、その時刻、植物名、果実の色、光環境、採食速度、採食成功率について記録した。その結果、ノドジロオマキザルは、さまざまな色(赤、黄色、白、紫など)の果実を採食していることが分かった。しかし、本年度内には必要十分なデータが集まらなかったため、来年度にも採食行動のデータを同様の手法で収集する予定である。また、自然環境下では、ノドジロオマキザルがヘビに遭遇する頻度は低かった。そのため、自然環境下におけるデータを補足するために、日本モンキーセンターで飼育されているボリビアリスザルを対象とした実験をおこなった。各個体のDNA試料を収集し、オプシン遺伝子の解析によって色覚型を判定した。ヘビ型モデルを使用して、捕食者の検出にかんする行動実験をおこないデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、コスタリカ共和国での海外調査によって野生オマキザルの行動データの収集をおこなった。また、日本モンキーセンターにおいて、飼育下のリスザルのオプシン遺伝子の解析および行動実験もおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、引き続きコスタリカ共和国に生息する広鼻猿の行動データの収集をおこなう。捕食者発見効率の検証のためのデータが不足しているため、日本モンキーセンターにおいて、2018年度に実施した手法にもとづいて、再度データ収集をおこなう。
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Research Products
(1 results)