2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J01554
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 佳明 東京大学, 生物生産工学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / イネ / 窒素 / 硝酸 / リン / 転写因子 / 転写制御 / 共発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物特異的なNIGT1転写因子群は硝酸イオン添加とリン欠乏によって誘導され、植物における重要な多量必須元素である窒素(硝酸イオン)とリン(リン酸イオン)の吸収を調節する働きを持つ。シロイヌナズナのNIGT1転写因子群がリンの吸収を調節する機構を明らかにするため、本年度、NIGT1転写因子の標的因子の候補であるSPXファミリー遺伝子の制御に関する解析を実施した。シロイヌナズナのプロトプラストを用いた一過的発現アッセイおよびゲルシフトアッセイの結果、NIGT1転写因子がSPX1とSPX4遺伝子のプロモーターに直接結合し、その発現を強く抑制することが明らかとなった。spx変異体から取得したプロトプラストを用いた解析の結果、NIGT1転写因子群はSPX遺伝子の発現抑制を介して、リン欠乏応答の中心的制御因子であるPHR1の活性を調節し、リン欠乏応答とリン酸取り込み量を調節していることが明らかとなった。NIGT1の4つの相同遺伝子を全て欠損した変異体では、正常なリン欠乏応答が生じなくなることも明らかにし、NIGT1がSPX遺伝子の発現抑制を介して、リン欠乏シグナルと関わる幅広い応答に影響を及ぼすことを示唆した。 また、栄養吸収と栄養応答性が多様な複数のイネ栽培種の根から取得したトランスクリプトームの解析を実施した。WGCNAソフトウェアを用いた遺伝子共発現解析から、窒素欠乏に応答して類似した挙動を示す遺伝子群、およびそれぞれの遺伝子群の発現パターンの形成に重要なハブ遺伝子の同定を行った。ハブ遺伝子の中にはNIGT1と相同性の高いHHO転写因子が含まれており、NIGT1/HHO転写因子ファミリーが幅広い植物種において栄養応答に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオインフォマティクスを利用したネットワーク解析手法を立ち上げ、当初の予定通り、イネの遺伝子発現データの解析により、窒素欠乏応答に関わる重要な転写因子の候補の絞り込みに成功した。NIGT1転写因子と相同性の高いHHO転写因子がイネの窒素欠乏応答に関わるネットワークの中心部に位置するという結果は興味深く、配列の類似する異なる転写因子が組織、植物種、もしくは窒素条件によって巧妙に使い分けられている可能性が示唆された。また、シロイヌナズナのNIGT1転写因子がリンの取り込みを調節するメカニズムを明らかにできたことは栄養応答ネットワークの解明において重要な進展であると考えられる。以上の点を総合的に判断し、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に研究が進展していることから、当初の予定通り研究を実施する。本課題の目標のひとつである数理モデルの構築および実験的な検証に向けたデータの取得および材料の作製を進める。イネのネットワーク解析については、今年度同定されたハブ転写因子がどのような遺伝子を制御するかを推定するともに、実験的な検証を実施する。また、ハブ転写因子の変異体の作製を行い、これらの転写因子が植物体レベルでどのような働きを持つか、また窒素欠乏応答にどのように関わるかを精査する。
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Research Products
(9 results)