2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動量空間におけるスピン構造の分類と、そのスピントロニクス応用に関する理論的研究
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18J01610
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大熊 信之 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | トポロジカル物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
KaneとMeleにより提唱されたトポロジカル絶縁体は、輸送の無散逸性や巨大な電荷スピン交差応答の存在から、次世代のエレクトロニクス及びスピントロニクスに広範な応用を持つ。その数理的側面については、Kitaevによりトポロジカル絶縁体の分類が運動量空間の位相的K理論で与えられる事が指摘されて以降、場の量子論研究者及び数学者も加わった学際的な深化が行われた。中でも重要な成果の一つとして、数学者のFreedらにより結晶対称性に守られたトポロジカル絶縁体の分類問題が捻れ同変K理論として定式化された事が挙げられる。この研究はトポロジカル物質探索の理論的指針を与えたが、一般の結晶対称性について捻れ同変K理論を計算する事は容易では無く、現在までに一部の簡単な結晶群を除きトポロジカル分類は知られていない。こうした状況の下我々は、結晶点群(32種類)及び磁気点群(58種類)に守られたトポロジカル絶縁体の完全な分類を行った。我々は一般の結晶点群及び磁気点群について適合関係を導出し、AHSSと組み合わせる事で、運動量空間の位相的K理論と双対関係にある実空間の位相的Kホモロジーを求め、トポロジカル分類を完了した。更に、実空間におけるAHSSの実行過程の副産物として、3次元絶縁体の表面に1次元エッジ状態が現れる2次トポロジカル絶縁体の分類も同時に完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受入教員である佐藤教授と共同研究者である塩崎助教との議論を通して技術的問題点は完全に解決された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、常伝導状態における磁気点群下のトポロジカル分類を明らかにした。理論面での今後の自然な拡張としては、磁気点群を磁気空間群に拡張する、常伝導だけではなく超伝導状態も扱える理論を構築する、といった可能性が残されている。点群を空間群に置き換える事で、分類の種類は飛躍的に増加し、そのK群を求める作業はより困難になる。また、超伝導状態については異なる形式論が必要になる。これらの難点を克服するのが今後の課題となる。物質科学的観点からは、分類に基づく実際の物質探索が主要な課題となる。
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Research Products
(2 results)