2018 Fiscal Year Annual Research Report
層状複合アニオン化合物を用いた超高速シンチレータ材料探索
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18J01627
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岩佐 祐希 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 複合アニオン化合物 / シンチレータ / 層状化合物 / 励起子発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超高速時間応答性を持つ新規シンチレータ材料の開発を行った。従来のシンチレータには数ナノ秒程度の発光寿命を持つ物質が使われており、この時定数が計測の時間分解能を決定づけている。本研究では数~10ピコ秒程度の減衰定数を持つ半導体励起子発光をもつ新規材料を探索し、シンチレータ材として用いることで、時間分解能の大幅向上を目指す。励起子発光は通常、極低温下でしか発現しないが、層状構造を持つ化合物を用いることにより、量子閉じ込め効果による励起子結合エネルギーの増大を狙った。本研究では励起子発光を示す新規の複合アニオン化合物を探索し、その特性を評価することを目標とする。 一年目は、新規材料の設計とその合成手法の開発を行った。励起子発光を示す複合アニオン化合物(Cu2S2)(Sr3Sc2O5)を基本構造とし、重元素で置換した新物質を検討することで、X線やガンマ線のエネルギー付与率の高い物質の設計を行った。これらの物質の生成の可能性を推測するために、前駆体と目的物質の生成エネルギーを第一原理計算によって評価した。この結果、新物質である(Cu2Se2)(Sr3Sc2O5)、(Ag2Se2)(Sr3Sc2O5)の生成が可能であることを示唆する結果が得られた。また、バンド構造から、これらの物質が基本物質と同様の直接遷移型の半導体であることが示唆された。この結果をもとに実際に固相反応法を用いて合成を行ったところ、2種類の新物質の合成がそれぞれ単相で得られた。拡散反射スペクトルと発光スペクトルを測定すると、これらの物質がそれぞれ2.9,2.5evのバンドギャップを持つ半導体であり、バンド端付近に数10ピコ秒の発光寿命を持つ励起子発光を示すことを確認した。また、この他にも複数の新物質が合成可能であることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新物質探索を行うにあたり、第一原理計算を利用した予測を行い、実際に予測に従った新物質を発見することができた。また、本研究を行うにあたり類似構造を持つ新物質も複数発見しており、これらの物質からも半導体励起子発光が確認されている。また、一連の新規層状化合物は励起子発光だけでなく、熱電特性やイオン電導などの他の機能性を示すものも含まれており、今後の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目で発見した化合物については既にいくつかの物質の発光特性を評価している。今後はその他に発見した新物質の測定を行う。また、計算科学を利用した物質探索法を他の構造にも利用し、引き続き新物質探索を行う。
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