2018 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュを用いた恐怖条件付け学習に必須な脳領域の遺伝学的研究
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18J01686
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小谷 友理 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 恐怖条件付け学習 / 情動 / 遺伝子 / Gal4-UAS |
Outline of Annual Research Achievements |
恐怖条件付け学習は、あらゆる動物に共通して見られる学習行動であり、哺乳類では扁桃体が重要な役割を果たすことが知られている。このような学習行動を司る神経回路が進化の過程でそのように獲得され、保存され、また改変されてきたか、は重要な研究テーマである。恐怖条件付け学習は硬骨魚類でも保存されており、キンギョを用いた外科的切除実験などから背側終脳の内側領域(Dm)が関係することが示唆されている。けれども、Dm領域というのは終脳の広い領域であり、機能的な神経回路についてはよくわかっていない。加えて魚類において、恐怖条件付け学習を司る機能的神経回路の遺伝学的アプローチ解析がなされてこなかった。研究代表者は、モデル脊椎動物ゼブラフィッシュを用いて多角的な遺伝学的アプローチを実施し、機能的な神経回路の詳細な解析を行うことを目指す。恐怖条件付け学習に必要とされているDm領域の神経細胞に特異的に発現する遺伝子に着目し、研究代表者は以下の解析を行った。(1)ゼブラフィッシュにおいて、Dmに特異的に発現する遺伝子の機能欠損変異体をCRISPR/Cas9法により作製した。着目した遺伝子に対し、異なる変異アレルを持つ三種類の変異体を作製した。(2)作製した変異体を用いて恐怖条件付け学習を行ったが、学習効率の低下は見られなかった。(3)変異体において、Dm領域の神経細胞のパターンに影響が見られた。(4)RNA-sequenceの結果から、着目した遺伝子は情動に基づく行動に関わる可能性があるため、情動に基づく行動を観察するためのシステムを開発した。(5)Gal4-UASシステム、CRISPR/Cas9法を用いて、Dm特異的に発現する遺伝子の遺伝子トラップラインを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恐怖条件付け学習の実験では、変異体を用いた予備実験の結果を再現することができなかった。しかし、RNA-sequenceの結果から、着目した遺伝子が情動に基づく行動に関与する可能性があるため、行動解析システムを開発した。着目した遺伝子が扁桃体相当領域であるDmの機能に関わるかどうかを解析している。変異体において、Dm領域の神経細胞のパターンが影響を受けるため、マーカー遺伝子と照らし合わせ、影響を受けた神経細胞の種類を同定している。着目した遺伝子のGal4トラップラインを作製した。Gal4の発現が低く、遺伝子操作を可能にするレベルではないため、ターゲット部位を変えて引き続き作製している。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-sequenceの結果を確認するため、得られた遺伝子に対する定量PCRを行い、In Situ ハイブリダイゼーションにより発現する領域・細胞を同定する。変異体を用いて、情動に基づく行動や学習を、開発したシステムを用いて解析する。変異体において、マーカー遺伝子との免疫染色により、影響を受ける神経細胞の種類を同定している。遺伝子トラップラインのターゲット部位を変えたトランスジェニックを作製する。
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Research Products
(2 results)