2018 Fiscal Year Annual Research Report
西洋古代末期における翻訳論の研究:ヒエロニュムスの論争を中心に
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18J01848
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 哲平 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD) (70839985)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 翻訳学 / ヒエロニュムス / 聖書翻訳 / ギリシア教父文学 / 翻訳理論 / 翻訳実践 / ヘブライ語 / ギリシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究計画どおり二次文献の精読を行った。聖書翻訳者としてのヒエロニュムスに関する研究については、博士論文の執筆時に大方フォローしてあったが、ギリシア教父文学の翻訳者としてのヒエロニュムスについては新たに文献を渉猟する必要があった。聖書翻訳に関する研究では、翻訳の理論、実践、そして彼のヘブライ語能力の問題が問われていた。ヘブライ語能力の問題は、本来であれば実践の下位区分とすべき内容ではあるが、独立した分野と言えるほど盛んに研究されている。このように聖書翻訳者としてのヒエロニュムスは、翻訳者でありながら、研究者から強い関心を持たれてきた。しかしながら、当該年度の二次文献の精読によって明らかになったのは、ギリシア教父文学の翻訳者としての彼は、あくまで原著者に対する二次的な存在として、原典を正確に翻訳したかどうかという基準でのみ論じられているということである。こうした非対称性について、次の年度に考察を深めたい。当該年度のヒエロニュムス研究では、博士論文の補遺となる次の2本の論文がアクセプトされた。"Hebrew, Apostles, and Christ: Three Authorities of Jerome's Hebraica Veritas," Vigiliae Christianae 73 (Leiden: Brill, 2019), forthcoming; "Ancient Chronography on Abraham's Departure from Haran: Qumran, Josephus, Rabbinic Literature, and Jerome," Journal for the Study of Judaism 50 (Leiden: Brill, 2019), forthcoming.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
翻訳者ヒエロニュムスの翻訳対象となる文書のジャンルによって、研究者たちの対応が異なることを発見したから。また成果の発信に関しては、口頭発表のみならず論文発表にまで至ることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの二次文献の渉猟を踏まえて、今後は一時文献の精読に移りたい。一時文献はギリシア語、ラテン語、ヘブライ語等の古典語で書かれているので、これまでのようにたくさんの量を読むことは困難だが、多くのテクストを分析することを目指したい。研究計画の段階では明らかではなかったが、ヒエロニュムスがギラテン語訳したオリゲネス『エレミヤ書説教』と『諸原理について』が極めて重要なテクストであることが明らかになってので、精読の対象としたい。
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