2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J01963
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
須崎 大地 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 初期胚乳 / 顕微細胞操作 / マイクロインジェクション |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の胚嚢の大部分を占める中央細胞は、受精をきっかけに活発な遺伝子発現を始め、次世代となる胚を育む胚乳へとダイナミックに転換する。胚乳核の分裂による多核化、助細胞と胚乳が融合した後に細胞化する。これら独特な細胞現象は、柔軟な組織形成の可能性を示す例として興味深い。本研究は、これら胚乳の初期発生を制御する遺伝子を同定し分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 胚乳の初期発生には受精後の新規な遺伝子発現が必要であることから、受精前後で変化する遺伝子群に目的の遺伝子が含まれると示唆された。本年は初期胚乳の遺伝子発現解析のために、組織特異的な細胞核単離法(INTACT法)によって初期胚乳核を単離する条件を検討した。ペッスルでの手動やビーズなど組織や細胞の破砕方法を検討したが、核の大きさが不均一なものが目立った。再度蛍光マーカーラインを確かめたところ、胚珠の背軸側の細胞に非常に弱くではあるがシグナルが見られたことから、相想外のプロモーター活性による母組織由来の核のコンタミネーションであることが考えられた。従来のプロモーターを使った最適な形質転換体の再選抜とともに、これまでに独自に取得した中央細胞のRNA-seqデータからより最適なプロモーターを探索するために、中央細胞で特異的に高発現する5遺伝子のレポーターラインの解析を進めている。 本研究と並行して、卵細胞の遺伝子発現情報を交えた国際共同研究を進めて論文を発表することが出来た。また、他2件のプロジェクトについても、論文投稿の準備を進めている。ここで確立したRNA-seqの解析パイプラインは本研究で取得するデータ解析にも応用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的である初期胚乳の発生イベントを司る遺伝子の同定と分子メカニズムの解明には、受精後の初期胚乳で新規に発現する遺伝子情報が不可欠である。本年度にINTACT法による初期胚乳の核単離を最適化してRNA-seqを進めたかったが、新たにプロモーターの改善が必要になったため、中央細胞特異的な遺伝子から5遺伝子の候補を絞り最適なものの選抜を進めている。 また、他プロジェクトにおいて本研究と同様のRNA-seqデータの解析手法を確立した。これによりデータ取得後の速やかな候補遺伝子の選抜が可能となる。以上の状況を踏まえて、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
INTACT法による胚乳核の単離のためこれまでに準備した形質転換体では、わずかながら胚珠組織で非特異的な細胞核での蛍光シグナルが観察された。胚乳核を厳密に標識するために、これまで独自に取得した雌性配偶体細胞のRNA-seqデータから中央細胞特異的な遺伝子を5つ選抜して各レポーターラインを作出した。各プロモーターの時空間的な活性を調べ、初期胚乳での発現が最適なものを選び、INTACT法による核単離を最適化する。 RNA-seqをおこない初期胚乳の遺伝子発現情報を取得する。中央細胞のデータと比較して受精後に上昇する遺伝子の中から、分泌タンパク質や細胞膜タンパク質、転写因子などの核局在タンパク質をコードするものを中心に胚乳発生に関わる遺伝子候補を絞りこむ。
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Research Products
(6 results)