2018 Fiscal Year Annual Research Report
両側回遊が創出する熱帯島嶼河川の種多様性とその起源
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18J01965
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
福森 啓晶 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 両側回遊 / 島嶼河川 / 種多様性 / 幼生生態 / 種分類 / 集団遺伝 / 幼生分散 / 腹足類 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯島嶼河川では,淡水域で生まれた幼生が海へ下り,数ヶ月かけ成長したのち,河口付近で着底して川を遡る両側回遊をおこなう動物が卓越し,高い種多様性を示す.この同生態系における種多様性の創出・維持には,島嶼河川に特徴的な頻繁な撹乱と両側回遊種の海洋幼生による河口への新規加入が繋がっている可能性がある.一方で,熱帯・亜熱帯域に生息する両側回遊性動物の種分類を含めた自然史に関する研究は少ない.本研究課題では,アマオブネ科貝類を対象に,その種多様性と各種の初期生態を含む生活史全体を把握するため,生態学・集団遺伝学・系統分類学・分析化学・古生物学的アプローチなどから研究を実施している. 本年度は,南西諸島やニューカレドニア等を中心に各地域・河川におけるアマオブネ類について種多様性の把握を進めた.南西諸島については,採集した標本を基に各島・河川・流程における種多様性を把握した.その結果,日本初記録となる種を含め,南西諸島には40種以上の河川性アマオブネ類が生息することが明らかとなった.ニューカレドニアにおけるアマオブネ科貝類の種組成検討には,パリ自然史博物館所蔵標本などを用いた.形態・分子情報による包括的な種分類の結果,30種以上が生息することが判明し,同地点ではこれまで種多様性が過小評価されていた事がわかった.また,そのうち半数以上が日本と共通する種であった.ミトコンドリアDNA COI遺伝子配列を用いた系統解析の結果,各種は種内における遺伝的差異が小さく,約7,000km離れた日本・ニューカレドニア間でも同一の遺伝子型の共有が見いだされた.また,幼生殻・蓋を用いた発生様式推定および卵嚢内幼生の観察により,邦産・ニューカレドニア産の種はプランクトン食型の長期浮遊幼生をもつことが判明した.また,各種の流程分布・幼生生態に関する情報を蓄積した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,河川性アマオブネ科腹足類を対象とした自然史情報の蓄積により,熱帯・亜熱帯島嶼河川の種多様性維持・成立プロセスを理解することを目的としている.初年度は,計画通り,生態学・集団遺伝学・分類学的手法等により,各地域での種多様性および各種の遡上や幼生生態に関する基礎情報を蓄積した.日本および,過去の基礎知見が少ないニューカレドニア各河川における種構成について,採集サンプル・博物館所蔵標本を用いた網羅的な分類学的再検討により,その種多様性を把握することができた.また,各国博物館のタイプコレクション・文献調査により,各種の有効学名を選出することができた.本年度中に国際誌に6報(主著2報)を発表した.全体的に,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,計画通りに研究を遂行する.各地域の種多様性把握については,国内・国外における採集および各国博物館からの標本貸借をおこない,遺伝・形態情報に基づく種分類の再検討を進める.また,核・ミトコンドリア遺伝子マーカーを用いた遺伝的集団解析をおこない,各種の幼生分散能力の推定を試みる.系統学的・古生物学的手法により,アマオブネ類の進化史について検討する.幼生の浮遊期間や着底後の行動について,各種の情報を蓄積する.また,殻・蓋形態より推定される幼生・幼貝時の生活履歴より,初期生活史について検討を進める.得られた結果は,研究成果として国際誌等で発表していく.
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] First insights into macrofaunal composition from the SokhoBio expedition (Sea of Okhotsk, Bussol Strait and northern slope of the Kuril-Kamchatka Trench)2018
Author(s)
Brandt, A., Alalykina, I., Fukumori, H., Golovan, O., Kniesz, K., Lavrenteva, A., Lorz, A.-N., Malyutina, M., Philipps-Bussau, K., Stransky, B.
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Journal Title
Deep Sea Research Part II: Topical Studies in Oceanography
Volume: 154
Pages: 106-120
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Deep-sea gastropods of the family Ringiculidae (Gastropoda, Heterobranchia) from the Sea of Okhotsk, Kuril-Kamchatka Trench, and adjacent waters with the description of three new species2018
Author(s)
Chaban, E.M., Kano, Y., Fukumori, H., Chernyshev, A.V.
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Journal Title
Deep Sea Research Part II: Topical Studies in Oceanography
Volume: 154
Pages: 197-213
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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