2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J02084
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高木 純一 奈良女子大学, 文学部, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 惣村 / 室町期荘園制 / 中近世移行期 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は概ね予定通り研究を遂行した。山城国山科七郷・伏見荘など、いくつかの事例に関する史料の読み込みと分析を主に行った。その内容については、次年度以降に研究報告・原稿化を期したい。研究成果としては、採用以前より取り組んできた山城国上久世荘に関する論考を発表することができた。 (A)高木純一「東寺領山城国上久世荘における段銭と「荘家の一揆」」(『待兼山論叢 史学篇』第52号、2018年12月)では、前稿「東寺領山城国上久世荘における「荘家の一揆」と損免・井料」(『ヒストリア』第二六四号、二〇一七年一〇月)に引き続き、当荘の領主であった東寺に対して行われた村ぐるみの民衆闘争である「荘家の一揆」が、当該期当該地域の荘園村落が存続し農業再生産を継続していくうえで不可欠の一環をなしており、この点に地域的・時期的特徴を見出すことができることを明らかにした。 (B)高木純一「東寺領山城国上久世荘における鎮守・寺庵」(早島大祐編『中近世武家菩提寺の研究』小さ子社、2019年5月刊行予定)では、当荘領域内に点在する宗教施設の実態解明を行い、従来研究蓄積の僅少であった、村の鎮守・村堂・惣堂などと呼ばれるような村落寺社や個々の百姓の家が営む寺庵までを含み混んだ荘園村落の宗教秩序を具体的に提示した。 以上により、概ね当該事例については分析を終えたと言える状況にあり、今後はその成果を著書としてまとめ、内容の是非を学界に問うことを目指したい。そのほか、今年度は当該研究の研究史整理や今後の方向性に関する問題提起についての研究報告も行うことができた(日本史研究会8月例会「移行期村落論・自力の村論の課題」)。これについては次年度中の原稿化を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は概ね予定通り研究を遂行した。ただし、検討を予定していた東寺領山城国下久世荘に関しては、今年度は十分に研究を進めることができなかった。反省すべき点であるが、その理由は単なる研究時間の不足だけではなく、今年度の研究を通じて、隣接する上久世荘との比較検討よりも、より広い地域での比較という方向性が問題解決に有効であるのではないかと考えるに至ったことにもよっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降においては、日本列島内部における京都近郊を核とする畿内地域と関東地域という本研究で当初予定していた比較の枠組みはもちろん、よりひろく、東アジア諸地域の村落やその上位権力との関係性をも念頭に置いて、中近世移行期における日本村落を、より総合的に把握する枠組みの構想を目指したいと考えている。 この点は、近年盛んな東アジア「近世化」論に刺激を受けたものであるが、本研究に従来の枠組みを克服するための深みと広がりをもたらしてくれるものと考え、新たに導入した視点である。
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