2018 Fiscal Year Annual Research Report
微小時間スケールのコロイド粒子ダイナミクス定量評価手法の確立
Project/Area Number |
18J02101
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
呉羽 拓真 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ハイドロゲル / 動的光散乱法 / 蛍光分光法 / コロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、生体環境のような多数の分子存在下で流動するμ秒オーダーのコロイド粒子ダイナミクスを定量評価可能な蛍光相互相関分光法の新たな評価手法の確立を目指している。本年度は、以下の2点の研究を実施した。 [1] 主目的である蛍光相関分光(FCS)装置の組み立てとその技術拡張。 装置骨格を組み立てるため、足りない部品(単一光子検出器,蛍光フィルター等)を購入し、高精度でFCS測定ができる環境を整えた。加えて、動的光散乱法(DLS)測定もできるように技術拡張も行った。これによりFCSとDLSの同時測定が可能になり、次年度に続くコロイド粒子と生体分子の相互作用を厳密に議論できる基盤が整った。 [2] ハイドロゲルのDLS測定・解析手法の確立 DLSおよびFCS測定は、物体からの散乱光強度の時間変化を追跡し、物体の運動情報を得る手法であることを活かし、評価・解析手法の確立および本研究課題の発展に繋がるよう、生体適合性かつ温度応答性のバルクゲルのDLS評価も遂行した。本研究で作製したゲルのDLS測定から得られる運動モードは、単一の指数関数で記述可能なゲルネットワーク由来のゆらぎと、それよりも遅い運動モードの2つが観察された。フィッティング関数を用い、ゲル網目の拡散係数とゆらぎの相関長は、昇温により発散する様に増大し、共重合比により臨界温度のシフトを確認した。また、ポリマー鎖同士が会合し形成されるドメイン由来の散乱寄与は、昇温に伴い増加し、ゲル内部で相分離したドメインが成長していることを示唆した。また、2種の高分子の共重合の比が異なることで、ドメイン成長の仕方は異なり、側鎖の長い成分が多いほど、嵩高さによる立体障害によりドメインが成長しづらいことがわかった。本研究は学術論文に受理され、学会等でも報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、本研究課題で重要となるFCS装置を組み立て、既製品と同程度の測定精度を有することを確かめた。また、光散乱法から得られる結果の解釈や解析手法も体得し、学術論文として認められた。これら検討結果は、本研究課題の目的であるダイナミクス評価に関して重要な知見であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
組み立てたFCS装置の十分な測定精度を確保するため、標準物質として蛍光ラベル化されたポリスチレンラテックス等を使用し、測定条件の最適化を図る。その後、生体分子存在下における合成粒子の相互相関関数の変化を捉え、生体適合性の評価を行う。タンパク質には血漿に含まれる免疫グロブリン、ヒト由来アルブミンを蛍光ラベル化したものを選択し、濃度・濃度、測定温度・pHを段階的に変え、体系的にデータを取得する。そして、生体適合性の高い粒子がどのような時間スケールでタンパク質と接触し、吸着を抑制するのかを相互相関関数とその解析から明らかにする。特に、FCS法から得られた相互相関関数は、2成分系理論式を用い、拡散時間と相互作用数を算出し、比較パラメータとする。
|