2019 Fiscal Year Annual Research Report
Simons Array実験の広視野超高感度CMB偏光観測によるBモード探索
Project/Area Number |
18J02133
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高倉 理 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | Simons Array実験 / 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / POLARBEAR実験 / 雲監視システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はSimons Array実験で広視野かつ超高感度の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測を行い、ニュートリノ質量和やインフレーションのテンソル・スカラー比rを高い精度で測定することである。 Simons Array実験の1台目の望遠鏡は昨年度チリ・アタカマ高地の観測所に建設され、試験観測を開始した。しかし、度重なる発電機や望遠鏡のトラブルにより、科学観測の開始には至っていない。私は望遠鏡が比較的安定して動作している時にチリに出張し、以下のような試験観測を行った。(1)検出器の温度上昇を許容範囲に抑えることができる望遠鏡のスキャン速度の調査、(2)木星や金星の観測を用いた望遠鏡のピント合わせ、(3)月の観測を用いた望遠鏡の光学系の迷光などによるサイドローブの調査、(4)検出器のチューニングデータを用いた応答性の補正、(5)金属ワイヤーを用いた偏光信号測定、(6)検出器の交流読み出しにおける複素インピーダンスの影響の調査、(7)望遠鏡に搭載予定の連続回転半波長板の角度読み出しの改良。 また、Simons Array実験では昼夜を問わず雲の有無を監視するために、赤外線カメラを用いた雲監視システムを開発した。開発した雲監視システムは天頂方向を向けてチリ観測所に設置され、2019年1月から6月まで安定に動作した。12月には改良版を望遠鏡の視線方向に向けて設置した。 一方、Simons Array実験の1世代前の実験であるPOLARBEAR実験のデータを解析し、方位数50<l<600におけるBモード偏光ゆらぎの測定結果を学術論文として発表した。この成果は口径2m以上のCMB観測望遠鏡でも原始重力波起源のBモード偏光が現れるl<100の大角度ゆらぎを測定できることを初めて示した。ただし、テンソル・スカラー比rの測定精度は先行する他の実験に及ばなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では本年度にはSimons Array実験の3台全ての望遠鏡が観測を開始する予定だった。1台目はチリで試験観測を開始したが、度重なる発電機や望遠鏡のトラブルにより、科学観測の開始には至っていない。2台目、3台目は主に米国の共同研究者が開発、試験を担当しているが、一部開発が遅れている。一方、1台目の望遠鏡による試験観測のデータ解析は比較的順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
Simons Array望遠鏡を完成させ、定常観測開始を目指したいが、新型コロナウイルスの影響により海外出張が制限されている現状では困難である。そこで、これまでの試験観測のデータを詳細に解析し、重大な問題だけでなく軽微な問題も発見、調査しておくことで、観測開始時のトラブルを軽減する。新しい知見が得られれば積極的に学術論文として発表する。
|
Research Products
(10 results)