2018 Fiscal Year Annual Research Report
青枯病菌コアエフェクターを利用した発病機構の解明と新規防除法の開発
Project/Area Number |
18J02213
|
Research Institution | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
Principal Investigator |
中野 真人 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, 遺伝子工学研究部門, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 青枯病 / エフェクター / 植物ホルモン / ジャスモン酸 / サリチル酸 / トウガラシ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物ホルモン情報伝達経路に影響を及ぼすエフェクターを同定するため、約70種類の青枯病菌エフェクターを植物葉で一過的に発現させ、LC-MS/MS分析により各種植物ホルモンを定量した。その結果、ジャスモン酸(JA)の含量を上昇させるエフェクターとしてRipALを同定した。本エフェクターを発現させた植物では、JA含量の増加に伴う黄化症状に加え、JA応答遺伝子の発現量が増加した。これらのことから、RipALはJA情報伝達経路を活性化することが示唆された。一方、RipALを一過的に発現させた植物では、サリチル酸(SA)の含量とSA応答遺伝子の発現量が顕著に減少し、JA情報伝達経路と拮抗的な関係にあるSA情報伝達経路が抑制されていた。次に、植物免疫応答に及ぼすRipALの影響を明らかにするため、RipALを発現させた植物葉にflg22エリシターを処理して免疫応答を解析した。RipALを一過的に発現させた植物では、flg22処理で誘導される活性酸素種の生産や防御関連遺伝子の発現が顕著に抑制された。最後に、青枯病菌の病原性にRipALが関わるかどうかを明らかにするため、本エフェクターの欠損株を作出してナス科作物における病原性を調べた。トウガラシ葉においてripAL欠損株は壊死病斑の形成が遅延するとともに、増殖能の低下が認められた。また、青枯病菌の野生株はトウガラシにおいてJAの生合成を誘導したが、ripAL欠損株ではJA生合成の誘導能を喪失した。これらの結果から、青枯病菌は感染時にRipALを介してJA生合成を誘導することで拮抗的な関係にあるSA情報伝達経路を抑制し、自身の増殖に適した環境を植物内に作り出すと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青枯病菌エフェクターを植物で発現させ、各種表現型を解析した結果、植物の防御応答を特異的に抑制するエフェクターを約10種類特定した。これらの内、複数のエフェクターについて標的とする植物因子や情報伝達経路を同定しており、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において、植物の防御応答を抑制する複数のエフェクターを特定した。今後の研究では、これらのエフェクターの欠損株を作出し、青枯病菌の病原性に関与するかを明らかにする。さらに、当該エフェクターが標的とする植物因子や情報伝達経路に与える影響を分子レベルで明らかにする。
|
Research Products
(3 results)