2018 Fiscal Year Annual Research Report
専門知とモノ作り実践知を融合した集落復興支援構築:放射線測定調査の社会的応用
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18J02249
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
林 剛平 福島県立医科大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 参加型調査 / 東京電力福島第一原子力発電所事故 / 放射性セシウム / ヒューマンインターフェース・インタラクション / 藍 / スクモ / 農 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射線量測定による基礎研究により、東京電力福島第一原子力発電所事故による環境中の放射性物質の分布を明らかにし、事故がもたらす被ばく経路を特定し、それを応用することで、汚染地域での共同体の存続に必要な事柄を把握することを目的とした。 研究方法として、住民のエンパワメントとコミュニティの修繕の為に、参加型調査手法を援用した。人が住み続ける放射能汚染地域として、農村である福島県大玉村を主に対象とした。 研究実績には、住民が主体的に運営する藍染めの集まりが定着したことが挙げられる。2016年に歓藍社という名前で始った運動体が、当初から参加している住民が年間を通じての作業を創意工夫し、規模を必要な分拡大し、一昨年に比べ2倍程度の藍染染料産物、スクモを産出した。また、当初から参加していた都市部の若者1名が村の地域おこし協力隊として移住したことは、運営の円滑化と、活動の村内での広がりに大きな推進力となった。藍染め産物の試験的な販売が東京新宿駅内のカフェで常設化されたことも、今後の産物の販路としてだけでなく、都市と農村を繋ぐ事柄として特筆できる。染めの技法としても、在来のスクモ建ての工法を住人と共に実現できたことは誇らしい出来事であった。それにより、淡い青から濃紺までの色彩を可能にすることが出来、住人の針仕事の得意な人の絞り染めの仕上がりが、一段と際立ち、当人も周囲もそれを嬉しく思った。 こうした活動を通じた参加型調査から見えてきたニーズとして、スクモを藍染め工程で使用する木灰の供給を発見した。大玉村での汚染レベルでは、一年草の藍は食品としても十分に耐える汚染量に留まるが、樹木は、事故当年に表皮に汚染を被っており汚染量が高く、灰化することによって濃度は一段と高まる。今後、農村と周囲の過疎地域を産物で繋ぐ回路として重要なニーズの発見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
参加型調査の問題は、調査に住民を参加させるという包含関係であると考えられる。本研究は、調査者あるいは、調査するプロジェクトを住民の日常の農作業の中に参加させるという転倒が特筆的であり、その為、住人の関心に沿って活動は進められ、調査はその中で必要とされた時に立ち上がる。 こうした実験的な研究手法を取った為、どの程度の進展があるか計画段階では、その時点での見通しを立てたため、推測していた以上の進展が2018年度あった。実績の概要でも述べた、在来の工法を改めて行うことが、住人のエンパワメントになることや、活動を共にしていた仲間が村に住むようになることは想定しておらず、結果当初の予定よりもはるかに研究の広がりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
進展の推測が難しい研究手法であるが、大地震、放射能汚染、津波という複合災害に対する復興事業は、長期的視野を持って、優先順位の在り方を考える必要があると考えており、その為には、村を構成する行政区画、字(あざ)規模の共同体にとっての「復興」における時間感覚に沿った研究が最適であると考えているため、同様の手法で研究を進める。
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Research Products
(9 results)