2019 Fiscal Year Annual Research Report
専門知とモノ作り実践知を融合した集落復興支援構築:放射線測定調査の社会的応用
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18J02249
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
林 剛平 福島県立医科大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 藍 / 原発事故 / 農 / 建築 / デザイン / 伝統工法 / 放射性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
・誇れる産物としての藍の六次化 藍の生葉、スクモ原料の栽培、育成、収穫を行った。地域の住民と都市部から来る職能を持つ若者が年間を通じ、12月、3月を除く毎月集まる機会を創出し、放射能汚染地域に於ける誇れる農作物の作り方を考えた。生葉の季節である7月にあわせ、銅版画のプレス機の導入したことにより、生葉染め表現において、一枚づつ並べるという恣意性を排することが可能になった。これは、ともすると手の痕跡が残りすぎ、「素朴」になりすぎる生葉叩き染めの難点を克服し、「デザイン」への昇華を可能にすると考えられた。藍葉の葉脈を残しつつ、型染めの輪郭を際立たせる、地と図の反転の効果があり、6次化に向けた大きな進展であった。試験的に行った市場調査においても、今までの倍以上の価格でのTシャツの販売が可能であることが示唆された。このプレス機が来るまでのストーリーを戯曲化し、大玉村での演劇を上演し、好評を博した。 一方、在来工法により染めの技法を栃木県の紺屋で学び、藍の液化工程の動態研究の為の基礎的技法の習熟を試み、大玉村において、地域住民と共に、実践した。 ・水の放射線遮蔽効果を利用した住環境の放射線低減モデルの作成 水壁空間による放射線遮蔽室の作成:利用される空間として、建具、家具の規模から建築空間を検討した。そのために、大玉村でも力を入れている栗の木を利用した大玉村におけるテノール歌手によるコンサートのための音響板を作成した。栗板と柿渋の色味の検討、更には、その板と藍の生葉染めの布を用いた家具の作成をメンバーが行い、東京の喫茶店に納め、都市部の反応を知る機会に繋げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数人による生葉染めのデザイン手法の新たな方向性を、銅版画のプレス機の導入がもたらした。6次化における付加価値として、新規性があるが、この染の手法は他に無く、初めての試みである。銅版画という古い技法と、生葉染めという素朴な原始的な技法が出会うことによって生まれたこの新しい染を、地域住民と共に経験できたことは、人と人のインタフェースとしてのモノ作りとして特筆できる。こうした発見は、よろこびを産み、それは、原発事故後の汚染地域における農の尊厳の恢復を目指す、本研究の大きな進展であった。 また、藍の液化工程におけるセシウム動態を調べるためにも、実際の藍甕の状況を作る必要があり、そのためには、伝統工法での藍建ての知識が必要にある。習熟を要する技法であるが、夏の合宿形式の集中講義を栃木県の紺屋「紺邑」で受講できたことによって、その課題を克服した。現在までに3つの甕による藍建てに成功しており、持続的な藍甕のコンディションの維持を行っている。厳冬期に調子を崩した甕の経過観察を行い、春にかけて、新たに藍建てを行うことを計画した。 地元の製材所の力を入れている栗板の、藍とのコラボレーションを試行し、製品のプロトタイプまで行えたことは大きな進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎えるにあたって、報告集を作成する。コロナ禍における、モノの欠乏は、原発事故後の物流との類似点があり、そうした観点から、本研究をコロナ禍下の地域に応用することも視野に入れ、モノ作りをとおした人と人の繋がりを試行する。
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Research Products
(2 results)