2018 Fiscal Year Annual Research Report
Spin-resolved ARPES study of atomic-layer transition-metal dichalcogenides
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18J10038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中田 優樹 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 原子層材料 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / スピン・角度分解光電子分光 / 分子線エピタキシー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子層遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)における物性発現機構の解明および新機能物性の創出を目的として、主に分子線エピタキシー(MBE)法による新たな原子層TMD薄膜の作製と高分解能スピン分解角度分解光電子分光(ARPES)による電子状態の測定を行った。 成長基板温度を制御することにより、三角プリズム型構造および正八面体型構造の単層TaSe2薄膜を作り分けることに初めて成功した。これらの薄膜のARPES測定を行うことにより、単層1H-TaSe2が金属的な電子状態を有する一方、単層1T-TaSe2は理論計算に反して絶縁体的な電子状態を有するモット絶縁体であることを明らかにした。これらの結果は米国化学会誌ACS Applied Nano Materialsに掲載された。また、国内での学会にて以上の結果を発表した。 単層VSe2をMBE法により作製し、物性に密接に関わるフェルミ準位近傍の電子状態を詳細に測定することにより、140 K付近において電荷密度波転移に伴う金属-絶縁体転移が生じることを明らかにした。また、転移温度(140 K)以上では擬ギャップ及びフェルミアークが存在していることを発見した。フェルミ面の詳細決定により、これらのバルクでは見られない特異な電子状態は、次元性の変化によるフェルミ面変調によりネスティング条件が飛躍的に向上したことに起因している可能性を見出した。以上の結果はNano Researchに掲載された。 その他、Se化合物に加えTe化合物の新規原子層TMD薄膜の作製や、Kインターカレーションを用いた新たな原子層化手法の考案にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分子線エピタキシー法による新たな原子層遷移金属ダイカルコゲナイド薄膜の作製、およびスピン分解角度分解光電子分光による電子状態の測定を行った。その結果、いくつかの新たな原子層TMD薄膜の作製に成功し、それらの電子状態を測定することにより原子層化による特異物性の発現を解明することができたため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
合成手法の検討により、未だ合成が達成されていない原子層TMD(主に硫化物やテルル化物)を構造を制御して作製し、その高分解能ARPES測定を行うことにより、原子層化による電子状態や物性の変化を明らかにする。特に硫化物については現在原子層TMD対して主に用いているMBE法による合成が困難であることから、すでに作製条件が確立しているセレン化物やテルル化物を用いたトポタクティック反応による合成の可能性を検証する。 空間反転対称性の破れやトポロジカル相の表面状態に起因したスピン偏極電子状態が期待される原子層TMDのスピン分解ARPES測定を行い、3次元スピン構造を含む詳細な電子状態を決定することにより、スピン偏極電子状態と物性の関係を解明する。 これまで作製してきた多様な性質を有する原子層TMD薄膜にアルカリ金属を蒸着することでキャリア注入を施し、その性質を高分解能ARPES測定等によって調べることにより、キャリア注入による物性制御の可能性や新奇物性発現の有無などを明らかにする。特にキャリア注入を利用したフェルミ面制御によるCDW相制御の可能性や、CDW相やモット絶縁相と超伝導発現の関係に着目して研究を進める。 必要に応じて国内外の研究機関との共同研究を積極的に行い、放射光やレーザー光源を用いた様々な先端実験手法(X線吸収分光や共鳴非弾性X線散乱、軟X線光電子分光、レーザー光電子分光など)を利用することにより、多角的なアプローチで研究を進める。
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Research Products
(10 results)