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2018 Fiscal Year Annual Research Report

全可視光を利用する光合成生物における光捕集とエネルギー移動の調節機構の解明

Research Project

Project/Area Number 18J10095
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

植野 嘉文  神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2018-04-25 – 2020-03-31
Keywords光合成 / 光化学系 / 光捕集アンテナ / 励起エネルギー移動 / 時間分解蛍光 / 可視光
Outline of Annual Research Achievements

酸素発生型光合成生物は、2種類の光化学系(光化学系Iと光化学系II)に加え、種に特有の光捕集アンテナを持つことで利用可能な光の色の範囲を広げる。特にシアノバクテリア、紅藻、灰色藻は、フィコビリソームと呼ばれる光捕集アンテナを持つことで全可視光を光合成に利用できる。光合成における可視光の利用方法を解明することを目的として、平成30年度には、灰色藻Cyanophora paradoxaにおける長期的調節時の光捕集とエネルギー移動の調節機構を分光学的手法により検証した。
白色LED培養細胞と比較すると、単色(青、緑、黄、赤色)LED培養細胞では、光化学系に対するフィコビリソームの相対量が変化し、さらに、フィコビリソームから光化学系Iまたは光化学系IIへのエネルギー移動も変化することが明らかになった。単色LEDの光強度を上げて培養すると、光化学系に対するフィコビリソームの相対量の増加、フィコビリソームから光化学系IIへのエネルギー移動の抑制や経路の変化が起こることが示唆された。遅延蛍光スペクトルの精密測定から、スピルオーバーと呼ばれる光化学系IIから光化学系Iへのエネルギー移動の寄与が培養光の波長や強度に依存しないことが示された。このような調節は、灰色藻と色素組成が類似するシアノバクテリアや紅藻では報告されておらず、新しい知見である。
比較のために、フィコビリソームを持たない珪藻Chaetoceros gracilisに関しても検証したところ、培養光の波長により色素組成を大きく変化させないことが明らかになった。一方、赤色系LED培養細胞では、これまでに報告がされていない新たな光捕集アンテナが発現していることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

分光学的手法を用いて得られた結果から、単色LED条件下での培養により、(1)光化学系に対するフィコビリソームの相対量と(2)フィコビリソームから2種類の光化学系へのエネルギー移動が調節され、(3)スピルオーバーが調節されない、ことが明らかになった。このような調節は、シアノバクテリアや紅藻では報告されておらず、新しい知見である。この内容を国際シンポジウムにて発表したところ5-min short talk speakerに選出された。比較のために検証した珪藻において、赤色系LED培養によりこれまでに報告がされていない新たな光捕集アンテナが発現することが示唆された。平成30年度に測定したサンプルの詳細な解析がまだ完了していないが、現在得られているデータからこれまでに報告例がない新たな知見が多数得られているため、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。

Strategy for Future Research Activity

平成30年度中に完了しなかったグローバル解析とコンポーネント解析を行う。光化学系Iに由来する成分の波長と数がコンポーネント解析の問題となっていたが、平成31年度に単離PSIを測定する機会が得られるため、そのデータを基にすれば解決可能であると考えている。
また、平成30年度に珪藻Chaetoceros gracilisにおいて発現が示唆された新たな光捕集アンテナの分光特性を測定し、従来の光捕集アンテナと比較する。
当初の研究計画通り、灰色藻Cyanophora paradoxaにおける短期的調節時の光捕集とエネルギー移動の調節機構を検証する。長期的調節(平成30年度)と短期的調節(平成31年度)の結果の相互理解を通して、可視光利用時の光捕集とエネルギー分配の調節機構の全容を明らかにする。得られた結果の普遍性の検証のために、他の灰色藻に対しても同様に測定および解析を行う。

  • Research Products

    (8 results)

All 2019 2018

All Presentation (8 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] 時間分解蛍光分光法を用いた灰色藻Cyanophora paradoxaの長期光環境応答2019

    • Author(s)
      植野嘉文、秋本誠志
    • Organizer
      第60回日本植物生理学会年会
  • [Presentation] 単細胞緑藻Chlorella variabilisにおける低CO2条件での光捕集機能調節2018

    • Author(s)
      植野嘉文、嶋川銀河、藍川晋平、三宅親弘、秋本誠志
    • Organizer
      第9回日本光合成学会年会
  • [Presentation] 単細胞緑藻Chlorella variabilisにおけるCO2に対する光捕集機能変化2018

    • Author(s)
      植野嘉文、嶋川銀河、藍川晋平、三宅親弘、秋本誠志
    • Organizer
      平成30年度春期新光合成領域会議
  • [Presentation] 絶対蛍光強度測定による緑藻Chlorella variabilisにおけるCO2条件に依存した光捕集機能調節の解明2018

    • Author(s)
      植野嘉文、嶋川銀河、藍川晋平、三宅親弘、秋本誠志
    • Organizer
      光合成セミナー2018:反応中心と色素系の多様性
  • [Presentation] 絶対蛍光強度測定による緑藻Chlorella variabilisにおけるCO2条件に依存した光捕集機能調節の解明2018

    • Author(s)
      植野嘉文、嶋川銀河、藍川晋平、三宅親弘、秋本誠志
    • Organizer
      2018年光化学討論会
  • [Presentation] Modification of excitation energy-transfer processes of the glaucophyte Cyanophora paradoxa in response to different light qualities2018

    • Author(s)
      Yoshifumi Ueno, Seiji Akimoto
    • Organizer
      International Symposium on Photosynthesis and Chloroplast Biogenesis 2018
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 灰色藻Cyanophora paradoxaにおける異なる光質に対する励起エネルギー移動過程の調節2018

    • Author(s)
      植野嘉文、秋本誠志
    • Organizer
      平成30年度秋期新光合成領域会議
  • [Presentation] 羽状目珪藻Phaeodactylum tricornutumにおける光捕集機能の培養光質依存性2018

    • Author(s)
      植野嘉文、岡久美子、長尾遼、横野牧生、沈建仁、秋本誠志
    • Organizer
      若手フロンティア研究会2018

URL: 

Published: 2019-12-27  

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