2018 Fiscal Year Annual Research Report
多価不飽和脂肪酸合成酵素における生産性と生産物制御機構の解明
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18J10174
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 祥平 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 多価不飽和脂肪酸 / ポリケチド合成酵素 / 脂肪酸合成 / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドコサヘキサエンサン (DHA) やエイコサペンタエン酸 (EPA) などの多価不飽和脂肪酸 (PUFA) の新規供給源として微生物による発酵生産が期待されている。DHAについては微細藻類によるDHA生産が検討されているが、EPAの大量発酵生産系はなく、その開発が望まれている。上述の微細藻類はポリケチド合成酵素に似たPUFA合成酵素によりDHAを生合成するため、合成酵素の生産物制御機構に基づいた機能改変できれば、EPAの大量発酵生産が可能である。しかし、その制御機構は未解明である。そこで本研究ではPUFA合成酵素の生産物制御機構を明らかにすることを目的として、DHAとEPA合成酵素の機能解析を行った。大腸菌を異種宿主としたin vivo PUFA生産系を用いてDHAとEPA合成酵素遺伝子及び触媒ドメインの交換実験を行い、β-ketoacyl synthase (KS)/Chain length factor (CLF)ドメインが生産物の炭素鎖長制御に関与することを明らかとした。次に、PUFA合成酵素を構成する各触媒ドメインの精製酵素を取得し、有機合成基質を用いてin vitro PUFA合成システムを再構築した。この解析系を用いて制御ドメインの機能解析を行い、KS/CLFドメインがDHA生合成経路における最後の縮合反応を触媒し、その基質特異性の違いによって最終生産物の炭素鎖長が制御されていることを明らかとした。また、構築したin vitro解析系を用いてPUFA合成酵素の2つのDehydratase (DH) ドメインの機能解析を行い、2つのDHドメインはそれぞれ基質の炭素鎖長によって異なる基質特異性を示し、生産物のcis二重結合形成に関与することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度ではPUFA合成酵素を構成する各触媒ドメインと合成中間体を用いた in vitro PUFA合成システムの構築を目標に (1) 制御ドメインKS/CLFの精製酵素の取得、(2) 中間体基質の有機合成、(3) 精製酵素の活性確認の検討を行った。さらに、次年度に予定していたin vitro解析系を用いた制御ドメインの機能解析に取り組み、KS/CLFドメインがDHA生合成経路における最後の縮合反応を触媒し、その基質特異性の違いによって最終生産物の炭素鎖長が制御されていることを明らかとしており、当初の計画以上に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究でin vitro PUFA合成システムを再構築し、制御ドメインKS/CLFのin vitro機能解析を行い、DHA合成酵素由来制御ドメインKS/CLFが炭素鎖長20から22への縮合反応を触媒することが明らかとした。そこで、平成31年度では次の3点について検討を行い、詳細な生産物制御機構を解明する。(1) KS/CLFの生産物制御に関与するアミノ酸残基の同定、(2) KS/CLFの諸性質の解析、(3) 最終生産物のリリース機構の解明 (1)DHA及びEPA合成酵素のKS/CLFドメインのマルチプルシーケンスアライメントを用いて、各ドメインに特異的に保存されるアミノ酸残基を選定する。選定されたアミノ酸残基についてDHA合成酵素KS/CLFにEPA合成酵素の配列となるように変異を導入後、その合成活性を評価し、生産物制御に関与するアミノ酸残基を同定する。 (2)これまでの研究からPUFA合成酵素のKSとCLFドメインの両方が最終産物の制御に重要であることがわかっており、KSとCLFドメインがヘテロ多量体を形成し、縮合反応を触媒している可能性が示唆されている。そこで、KS/CLFのゲルろ過クロマトグラフィー分析を行い、KS/CLFの4次構造を明らかとする。 (3)KS/CLFドメインによって炭素鎖長20から22への縮合反応が触媒され、炭素鎖長22の生成物が形成されるが、最終生産物がどのようにアシルキャリアプロテインからリリースされるか明らかとなっていない。そこで、既に構築済みの大腸菌を異種宿主としたin vivo PUFA生産系を用いて最終生産物のリリースに関与するドメインを同定する。その後、そのドメインについて、in vitro機能解析を行い、生産物のリリース機構を明らかとする。
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Research Products
(8 results)