2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J10202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳 圭祐 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / Small scale problem |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質は我々の宇宙の物質の8割を占めている未知の物質で、銀河等の宇宙の構造が形成されるのに非常に重要な役割を果たしている。暗黒物質は未知の素粒子であろうと考えられているが、その具体的な性質は未だに謎に包まれている。宇宙論の標準模型では、暗黒物質は「冷たい暗黒物質」という、宇宙の構造形成においてその速度が無視できるような粒子として特徴付けられる。この冷たい暗黒物質シナリオは、近年の観測・シミュレーションの両面から詳しく調べられ、特に宇宙の大規模構造をよく再現することが明らかになった。ただし銀河スケールのような小規模構造においては、一部で両者の間に不整合があることも知られている。この不整合は暗黒物質の small scale problem と呼ばれている。Small scale problem は暗黒物質が単純な冷たい暗黒物質ではない可能性を示唆しており、暗黒物質の性質を解明する上で重要な手がかりを与えている。 この問題を解決する方法はいくつか知られているが、中でも有力なものに、暗黒物質同士に重力以外の自己相互作用を導入するというものがある。銀河スケール程度の小スケールで暗黒物質が強く自己相互作用をする場合、small scale problem をうまく解決できることが知られており、さらにそのために必要な相互作用の強さも決定される。ただしこのような暗黒物質を素粒子模型として他の実験と矛盾なく構築することは難しく、これまで良い模型が知られていなかった。本研究ではLmu-Ltau対称性を利用することで、様々な実験や観測の制限を自然に逃れつつ、small scale problem を解決できるような模型を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では具体的なテーマとして、Freeze-outで生成される暗黒物質とFreeze-inで生成される暗黒物質の二つを設定した。前者のFreeze-outで作られる暗黒物質に関しては、small scale problem との関わりで論文を一本発表し査読雑誌に採択されたため、順調に進展している。後者のFreeze-inで作られる暗黒物質に関しては、現在複数のテーマを議論し論文も書き始めているが、平成30年度中には発表に至らなかった。以上を踏まえた総合的な評価として、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Freeze-outで作られる暗黒物質の研究の発展として、直接検出実験の感度を下回るような軽い暗黒物質に関する研究を行う。特に他の様々な実験・観測の制限を逃れつつ、small scale problem を解決できるようなパラメータ領域が存在するかどうかを調べる。 Freeze-inで作られる暗黒物質の研究では現在執筆中の論文を完成させ発表する。さらにその発展として、軽いFreeze-in暗黒物質に対する、宇宙の構造形成からの制限に関する一般論を完成させる。
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