2018 Fiscal Year Annual Research Report
革新的集積技術で実現される超小型完全自律式プログラマブルマターの研究
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18J10240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇佐美 尚人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 無線電力伝送 / 超臨界流体成膜 / 静電アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、静電回転アクチュエータ及び無線電力伝送の研究に取り組んだ。静電回転アクチュエータについてはフィージビリティスタディとして、Programmable matterの構成要素であるロボット”catom”の模型を、地面側の電極アレイの作る電界により回転させる受動型の実験を行った。最大1cm最小1mmの模型について受動的な回転実験を行い、2mm程度およびそれより小さい模型において回転を観測した。またフォローアップのための静電界シミュレーションを行った。加えて、簡単なモデルを用いて、catomの寸法及びアクチュエータの印加電圧ごとに、回転させることのできる最大の質量を計算することができた。これにより、当初予定していたラッチングアクチュエータから成るアポトーシス型のようなProgrammable matterに加えて、自ら形状を変更することのできる自律駆動型のProgrammable matter に求められる技術的レベルを明らかにすることができた。 無線電力伝送については、群ロボットであるProgrammable matterへの給電モデルの解析受信インダクタの設計、及び作製手法の探求を行った。送受信インダクタ間の結合が弱いような、多数の受信器群への給電時の効率や受信電圧と各種パラメータとの関係を考えることで、受電インダクタへの要求を明らかにすることを目指した。結果として、現実的な範囲でシステムを成立させるには高密度な巻線から得られる高インダクタンスを持ちつつも、低い直列抵抗値をもついわゆる小型高密度な共振器が必要であることがわかった。これについて、いわゆるシリコン埋込み型配線を用いたインダクタを高度化することによって実現することを考案し、その手段として超臨界流体成膜による高アスペクト比の埋込み配線の作成に取り組んだ。以上の実績については博士論文としてまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラッチング機構に先駆けて、回転アクチュエータのフィージビリティスタディを行うことで、自律可動型catomが獲得できる機能の範囲を工学的に分析することを目指した。これは、短期的な目標にこだわらず、将来的なProgrammable matterの展開を見据えたものである。受動的な静電回転アクチュエータと、簡単なモデルを用いた計算とによるフィージビリティスタディによって、自律駆動によって回転を行うアクチュエータを実現するための、要求される電圧などの条件を導くことができた。 無線電力伝送については、送受信インダクタ間の結合が弱いような、多数の受信器群への給電時について解析を行い、低相互インダクタンスがシステム設計において過剰な送信側電流を要求することを示した。高いインダクタンスをもつ高密度巻線なインダクタがこの問題を解決できることを示唆し、シリコン埋込み型配線を高アスペクト比化することでこのようなインダクタが実現できることを電磁界シミュレーションによって示した。また、この埋込み型配線の実現手段として、高アスペクト比なトレンチへコンフォーマルな成膜が可能な超臨界流体成膜に着目し、これについて実験系の構築と実際の成膜を行った。特に、インダクタの寸法によっては超臨界流体成膜で得られた金属膜は電気めっきの種層となることが期待されるが、その成膜された金属膜がめっきの種層としてふさわしいかを評価するテスト手法を考案し、IEEE ICMTS 2019 にて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた成果は、博士論文としてまとめることはできているものの、超臨界流体成膜に関する結果を除いて対外発表ができていない。来年度はこれらの成果を積極的に発表していくことを目標とする。 静電回転アクチュエータのフィージビリティスタディにより、ラッチングアクチュエータと比べて回転アクチュエータでは数倍~十数倍の高電圧が要求されることがわかった。そのため、来年度は既存のテクノロジーで実現可能な、ラッチングアクチュエータのみを用いたProgrammable matterの実現に注力することとした。また、上記のフィージビリティスタディは方針を立てるにあたっては有用であったものの minimum publishable unit には至っておらず、来年度はラッチングアクチュエータと合わせて考察を深める。 無線電力伝送の理論的な考察については、catomの受電インダクタ同士の結合などを含めた考察を行うことによって、より精密なモデルを構築し、実際の設計に役立てることを目指す。シリコン埋込み型配線を用いたインダクタについては、実現を目指して超臨界流体成膜のプロセス改善に取り組む一方、各種パラメータが性能に与える影響について電磁界シミュレータなどを用いてより深い知見を得ることを目指す。
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