2018 Fiscal Year Annual Research Report
その場分光観測による腐植物質生成模擬過程の速度論的追跡
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18J10249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中屋 佑紀 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 腐植物質 / メイラード反応 / 紫外可視分光法 / 赤外分光法 / 三次元蛍光分光法 / 有機物無機物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
グリシン・リボース水溶液の褐変反応による腐植様物質の生成模擬過程の時間スケールを代表する指標として褐変過程の半増期を用い,高濃度・低濃度(ゲーサイト添加有・無)での結果をアーレニウスの式により低温へ外挿し,15℃での半増期を見積もると,最小で5年,最大で2000年程度となった.これは英虞湾水底堆積物の蛍光強度増加(腐植様物質増加に対応)の数十年の時間スケールと調和的であった.本研究で開発した水熱その場分光測定システムは様々な反応条件でのメイラード様反応に適用でき,腐植様物質生成時間スケールのより詳細な理解につながると考えられる. 一方,腐植物質などの有機物とゲーサイトなどの無機物が共存する系を直接観測する方法として,三次元蛍光分光法を土壌試料に適用することを試みた.粉体状態での蛍光分光測定ではアルカリ抽出などの前処理なく腐植化度を評価することができ,土壌や有機質廃棄物の分析での活用が広まりつつあるが,有機物の濃度が高い土壌・堆積物試料では,黒色の有機物による蛍光の再吸収が起こる可能性がある.そこで本研究では,全炭素・窒素量の異なる3種類の粉体土壌試料(黒ボク土,灰色低地土,黄色土),およびそれらのアルカリ抽出残渣,アルミナ・マグネタイト粉末による希釈試料を用意し,蛍光スペクトルおよび可視反射スペクトルを測定し,試料の黒色に由来する蛍光消光効果を検討した. その結果,土壌の種類によって,アルカリ抽出による有機物減少やアルミナ希釈による試料の白色化により,蛍光強度が大きくなる場合と,蛍光強度が小さくなる場合の両方があることがわかった.このような試料のL*値(白さ)による蛍光強度の減少メカニズムを理解することは,土壌粉体の蛍光スペクトルを定量的に理解するうえで重要であり,さらなる検討が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定装置の改良や実験条件・解析方法の見直しにより,グリシン・リボース混合水溶液の褐変反応による腐植様物質生成について,濃度や共存鉱物による影響を一部定量的に表すことができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
グリシン・リボース混合水溶液の褐変反応による腐植様物質生成について,より広い濃度範囲での模擬実験と測定を行い,腐植様物質生成への初期濃度の影響について詳細に検討する.また,水熱その場・減衰全反射赤外分光システムの改良を行い,鉱物表面での反応過程を追跡する. 一方,実環境で鉱物と複合体化した腐植様物質の定量・定性のため,三次元蛍光分光法を粉体試料に適用する試みを継続する.具体的には,粉体試料の有機物量と色(可視光反射率)による測定への影響を評価するため,有機物を含む土壌粉体試料やクロロフィルなどあらかじめ蛍光特性の分かっている粉体試料を用いた分析を行う.
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