2018 Fiscal Year Annual Research Report
遠アーベル幾何学を用いた数論的な体の絶対ガロア群の組み合わせ論的特徴付け
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18J10260
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻村 昇太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | グロタンディーク・タイヒミュラー群 / 遠アーベル幾何学 / 双曲的曲線 / 配置空間 / ベリー射 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、数論的な体の絶対ガロア群の組み合わせ論的特徴付けについて、関連した次の2つの研究成果を得た。 1.本来予定していた研究(グロタンディーク・タイヒミュラー群GTの閉部分群として、有理数体の絶対ガロア群G_{Q}を組み合わせ論的に構築する研究)の局所版(p進版)を考察した。具体的には、p進局所体Q_pの絶対ガロア群G_{Q_p}とY.Andre氏によって定義されたp進版グロタンディーク・タイヒミュラー群GT_pの比較であるが、GT_pからG_{Q_p}への自然な全射であって、G_{Q_p}に制限すれば恒等写像になっているものを構築した。このことは、G_{Q}とGTが一致するかを問うグロタンディーク・タイヒミュラー予想の、少なくとも局所版は肯定的に成立することを強く示唆する結果である。論文は執筆、投稿済みで、既にRIMS preprintにて公開している。また、この結果を発表する講演を2回、東京工業大学、広島大学で行った。 2.GTの閉部分群として、数論的な体の絶対ガロア群を組み合わせ論的に構築する研究も順調に進んでいる。特に平成30年度は、望月新一氏との議論により、申請書で提案していた(数論的な体の絶対ガロア群の候補である)組み合わせ論的に定義されるGTの部分群BGTの定義を修正し、より精密な定義を与えることに成功した。そしてその修正版においても、BGTからG_{Q}への自然な準同型は存在している。また、BGTからG_{Q}への自然な準同型が単射になるためのBGTに対する組み合わせ論的条件も1組特定している。これらに関する論文は現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、有理数体の絶対ガロア群をグロタンディーク・タイヒミュラー群の中で組み合わせ論的に特徴付けることのみを目的としていた。しかし、平成30年度の研究では、局所的(p進的)な状況における対応する問いに対して、(特徴付け等では無くむしろ)等号成立を強く示唆する当初の予定には無かった有意義な結果を得ることができた。また、大域的な状況での組み合わせ論的な特徴付けに関する研究も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
大域的な状況での組み合わせ論的特徴付けは既にほぼ完了しているため、点検しつつ、現在執筆中の論文を完成させることを目標とする。また、組み合わせ論的特徴付けは基本的には双曲的曲線、及び、その配置空間に対する組み合わせ論的遠アーベル幾何学の応用である。G_{Q}とGTの比較に関するさらなる研究推進のため、組み合わせ論的遠アーベル幾何学そのものの研究にも取り組みたい。 局所版(p進版)では、平成30年度に構築したGT_pからG_{Q_p}への全射が単射であることを示すことを目標としたい。そのためには、緩和基本群に対するより精密な理解が必要になるため、緩和基本群そのものの性質を調べる研究も並行して行う予定である。
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Research Products
(2 results)