2018 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子材料を用いたマルチカラー蛍光の光スイッチングシステムの構築
Project/Area Number |
18J10399
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中濱 龍源 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 蛍光 / 結晶化誘起発光 / 相転移 / メカノフルオロクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固体発光性ジアリールエテンを用いた様々な外部刺激に応じて複数の蛍光色と消光状態を自在にスイッチングできるマルチカラー蛍光ON/OFFスイッチングシステムの構築を目指している。本年度は、固体発光性ジアリールエテンへの様々な置換基の導入に伴う蛍光特性への影響および様々な外部刺激による蛍光変調応答性を検討し、さらに固体中における光反応性失活の原因の解明に関する研究を行った。ジアリールエテンの末端フェニル基にメチル基からブチル基までの種々のアルキル鎖を導入した4種類の誘導体を合成し、その発光特性を検討したところ、導入前の蛍光色とは大きく異なる緑色の蛍光が観測された。単結晶X線結晶構造解析の結果、すべての結晶中で末端フェニル基間の分子間相互作用が存在しないことが明らかとなり、アルキル鎖の導入による蛍光色の制御に成功した。さらに結晶を融解させ、急冷することでアモルファス固体を作成し、熱および機械的刺激応答性を検討したところ、摩擦した後加熱したときのみ速やかに結晶化が進行し、黄緑色から緑色に蛍光色が変化することがわかった。これは摩擦によって生成した微小な結晶核が加熱によって成長することに起因することを明らかにでき、熱および機械的刺激の二重刺激応答性を見出した。また、ジアリールエテンの光閉環反応量子収率に対する溶媒粘度依存性を検討したところ、溶媒の粘度の増加に伴い光閉環反応量子収率が減少することを見出し、固体中の光反応性の失活にはこの粘度依存性が大きく影響している可能性が示唆された。また、一連の研究の過程でジアリールエテンのエテン部位をベンゼン環に置換した誘導体が、高速な熱退色反応を示すことを新たに見出した。これを用いることにより、紫外光のみで発光と消光状態をスイッチングできる蛍光ON/OFFスイッチング分子を開発できると考えられる。現在、その詳細を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、固体発光性ジアリールエテンを用いて複数の蛍光色と消光状態を様々な外部刺激を用いて自在に制御できる分子システムの構築を目的として研究を進めている。本研究の達成のためには、基本骨格となるジアリールエテンの固体状態での蛍光特性の制御および光反応性に関するメカニズムの解明が必要である。上述したように、平成30年度ではジアリールエテンへのアルキル鎖の導入による蛍光色の制御と熱および機械的刺激による蛍光色変化を達成している。さらに、光閉環反応量子収率に対する粘度依存性や励起状態ダイナミクスを明らかにすることにも成功している。これら研究成果は今後の研究を推進するための重要な成果と考えられ、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、異なる蛍光色を示す種々の発光状態と消光状態を様々な外部刺激を用いて自在に制御できる分子システムの構築を目的として研究を行っている。これまで、順調に研究計画通り進捗しており、今後はこれまでに得られた知見を基にした分子構造と固体状態の制御によって固体発光性ジアリールエテンの蛍光色のさらなる多色化とそれらの相互変換に取り組む。さらに、目的とする分子システムの実現のために可逆的に色調変化を示す別種のジアリールエテンを分子システムに組み込むことで蛍光ON/OFFスイッチング特性の付加を検討する。
|
Research Products
(9 results)