2018 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス活性配位子を有する遷移金属錯体による不活性アルカンの触媒的変換法の開発
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18J10488
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 大輝 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | レドックス活性配位子 / ラジカル / C-Hアミノ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「レドックス活性配位子を有する前周期遷移金属錯体の合成」と「レドックス活性配位子を有するロジウム錯体によるC-Hアミノ化の機構解明」の二つのテーマに関してそれぞれ実験検討を行った。 前周期遷移金属錯体の合成に関しては嵩高い置換基を有するフェニレンジアミン配位子の合成には成功したが、錯体の合成検討において錯体が水に対して極めて不安定であることが判明した。錯体の諸性質と反応活性との相関を調べることは本研究課題を遂行する上での主な目標の一つである。以上の理由から前周期遷移金属錯体の詳細な性質検討が困難であると判断したため、合成検討は断念した。 一方で、ロジウム錯体によるC-Hアミノ化の機構解明に関しては新たな知見が得られた。このロジウム錯体はトシルアジドを用いたC-Hアミノ化反応において触媒活性を有することが既に確認できていたが、反応中間体に関する実験事実は得られていなかった。反応中間体の同定のため、基質が存在しない条件下でトシルアジドとロジウム錯体との反応を検討した。得られた錯体を単結晶X線構造解析、電子スピン共鳴分光法(ESR)、質量分析、元素分析により同定することに成功し、配位子の構造変化を伴ってイミノセミキノン錯体が生成したことが判明した。得られた錯体の結晶構造から、反応系中において想定するジラジカル型の反応活性種が生成し、分子内でラジカルカップリングを起こしたと考えられる。トシルアジド以外にもジフェニルホスホリルアジドなどの有機アジドを用いて反応検討を行い、得られた成果に関して学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定のように前周期遷移金属錯体の合成はできなかったが、レドックス活性配位子を有する遷移金属錯体を用いてラジカル活性種を生成させる際に、分子内反応によって錯体の分解が起こりうることを見出した。この知見をもとに、分子内反応が起きないように錯体の配位構造を制御して錯体の失活を防ぐことで、高効率な触媒系の構築へつながると期待される。また、この知見はC-Hアミノ化だけでなくC-H水酸化反応やカルベンのC-H挿入反応など、同様の反応活性種が想定される反応にも展開が可能であることが期待できる。当初期待した結果とは異なるものの、反応途中における錯体の構造に関する情報が得られた。この結果は効率の良い触媒設計に向けた指針を与えるものであるため順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度で得られた知見をもとに反応活性種の分子内反応による分解を防ぐように錯体の配位構造を制御することで高効率な触媒の構築を目指す。また、有機アジドに限らずmCPBA(メタ過安息香酸)などの酸素移動試薬や、ジアゾ酢酸エチルのようなカルベン前駆体などの種々の原子移動試薬を用いて反応検討を行い、より活性化が困難なC-H結合を有する基質へと展開することを目指す。反応の追跡は紫外・可視吸収スペクトルとNMRによって行い、反応生成物の同定にはNMRとGC-MSを用いる。反応機構に関する知見を得るために反応中間体の同定に関する検討も行い、単結晶が得られた場合はX線結晶構造解析によって構造決定を行う。
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