2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J10578
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安中 進 早稲田大学, 政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 明治 / 税不納 / 自殺 / 米価 / 近代化 / 民主化 / サブサハラ / 栄養不足 |
Outline of Annual Research Achievements |
修士論文として仕上げたサブサハラ・アフリカにおける政治体制と栄養不足の関係を分析した論文「政治体制と栄養不足」を『比較政治研究』へと投稿し、掲載された。先行研究で関係が示唆されつつも、実証研究が乏しかった対象に対して、新たに構築したデータセットによって分析を試みた成果である。 博士論文に関連する研究としては、『内務省統計報告』や『各府県統計書』などから新たに構築したデータセットにより、松方財政期における税不納の分析を主に行った。この研究では、いわゆる松方デフレの時期は、米価が極端に下落することにより、大規模・小規模を問わず、多くの農民が深刻な被害状況に陥ったと考えられた。松方デフレの回復期には、凶作に端を発した米価急上昇の恩恵を受けた米生産額の増加によって大規模農家においては状況が回復していったのに対して、小規模の農民は凶作により売る米が少なくなったため、米価急上昇の恩恵を受けられずに、一層厳しい状況に陥った可能性を報告している。すなわち、大規模な農家が対象となっていたと考えられる当時の破産にあたる身代限は、松方デフレの回復期に急速に減少していくが、小規模農家も関係する税不納は、松方デフレが回復しても回復しないどころか、松方デフレの最悪期まで再び戻るような傾向が見られたと初めて明らかにした。こうした研究結果は、近年松方財政の影響をポジティヴに見直そうとする有力な研究に対して再考を促す可能性がある。こうした米価と身代限や税不納の関係を明らかにした研究成果は、社会経済史学会、政治経済学・経済史学会などでの学会報告へと結実している。これらの報告内容も投稿準備が完了次第、『社会経済史学』などに投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
修士論文を改訂したサブサハラアフリカにおける民主化と栄養不足の関係を分析した「政治体制と栄養不足」は、査読過程で様々なトラブルが発生し、予定よりも大幅に遅れて『比較政治研究』に掲載された。 また、本来「道府県統計書」の大規模なデータセットを購入し、作業を大幅に省く予定であったが、モジュールの購入が予想外に高額となったため、リサーチアシスタントによる手入力作業に代えた。この分でも遅れをとったが、アシスタントの作業の良好な進捗もあり、大幅な遅れとならずに、新たなデータセットを用いた分析へと進めた。これにより、博士論文の各章の対象となる自殺者、税不納、娼妓、米・繭生産額、米価といったデータが、ほぼすべて分析可能な状況となった。個別の章の分析を確定した上で、各章の整合性を保ちながら、全体を貫くストーリーを執筆する段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
入力を終えたデータを用いて、さらに分析を進める。戦前期日本の『内務省統計報告』『警視庁統計書』『各府県統計書』などを用いて、網羅的に収集した自殺者、税不納、娼妓、米・繭生産額や米価などのデータをもとにした分析を行う。博士論文に含まれる各章の内容を確定させるなどの作業を行いながら、残されていた全体をまとめる章と先行研究の章などの加筆を行う。博士論文の各章では、米価と税不納、税不納と自殺、繭生産や鉄道敷設と娼妓、民主化と乳児死亡といった関係を分析し、これらの関係を初めて計量的な手法を用いて実証的に説明する。また、戦前の日本で税制度が確立していく過程で農民がリスクを取らざるを得なかった様子や、近代化政策の一環である鉄道敷設が進展していき、繭の生産地が移っていった結果、農村の生活に大きな変化をもたらした様子を記述する。こうした制度や政策が税不納の増加による自殺といった問題や、繭生産額の減少による娘の身売りといった問題につながっていった過程を歴史的な記述とデータ分析により明らかにする。これらの研究成果を社会経済史学などの学会において引き続き報告し、フィードバックを参考に投稿準備する。これらの研究をまとめ上げ、博士論文を完成させる。 また、こうした博士論文のプロジェクトと同時並行的に展開している金融緩和が雇用対策に与える影響を人々の認識から実験的に分析する研究に加えて、徴兵制が国際紛争に与える影響を分析する研究も行っていき、学会報告を行い、フィードバックを参考に投稿準備に入る。
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Research Products
(4 results)