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2018 Fiscal Year Annual Research Report

テンソルネットワーク法の高次元化と格子ゲージ理論への応用

Research Project

Project/Area Number 18J10663
Research InstitutionKanazawa University

Principal Investigator

坂井 涼  金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2018-04-25 – 2020-03-31
Keywordsテンソルネットワーク / 格子上の場の理論 / 符号問題
Outline of Annual Research Achievements

Monte Carlo シミュレーションが抱える符号問題を回避するために,テンソルネットワーク形式による決定論的な計算手法を格子場の理論に応用する研究を行なっている.最終的な目標は4次元有限密度 QCD や相互作用を含む超対称性理論の解析であるが,そこに至るための一つの段階として,平成30年度は a) スカラー理論の新しいテンソルネットワーク形式の研究,b) 高次テンソルくりこみ群と呼ばれる手法の計算コストを削減する研究,に取り組んだ.
a) スカラー場は多くの模型において基本的な構成要素であるが,物理的な自由度が連続であることは,離散的な添字を持つテンソルネットワークとは相性が悪かった.本研究では,経路積分の中に現れるスカラー場の積分を Gauss 求積法により離散和として近似することで,離散的な自由度を生成しテンソルネットワーク表現を構築した.新手法の有効性は既に我々によって相互作用のない超対称性模型に対して確かめられていたが,今回,2次元 \phi^4 理論の臨界結合定数を計算し先行研究と矛盾しない結果を得たことで,その信頼性が更に増したと言える.
b) 高次テンソルくりこみ群と呼ばれるテンソルネットワークの粗視化法は,原理的には任意の次元の系に適用できる強力な手法である.しかし,その計算コストは系の次元と情報の容れ物であるテンソルのサイズに強く依存することが分かっており,3次元より大きな次元の系での応用は進んでいなかった.高次テンソルくりこみ群の中でボトルネックになるのは巨大な行列-行列積の計算であるが,今回我々は行列-行列積の計算を乱択化により高速化するアルゴリズムを高次テンソルくりこみ群と組み合わせることで,その計算量を削減することを考えた.新手法はまず2次元のスピン系に適用され,その妥当性が確かめられた.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

a) スカラー理論の新形式を用いた相互作用系の解析を初めて行ない,先行研究と矛盾しない結果を得た.また,場を離散化するという一見大胆な近似に起因する系統誤差がテンソルネットワークの粗視化に起因する誤差と比べて小さいということが示せた.スカラー理論をテンソルネットワークの言葉で精密に扱いたいという目的に照らして考えると,この結果は満足のいくものである.
b) 高次テンソルくりこみ群の高速化の研究については,巨大な行列-行列積の計算量を乱択アルゴリズムにより削減する新しい方法を考え,2次元のスピン系で期待される結果を得た.高次元系での費用対効果を適切に評価するためには更なる実験的研究が必要であるが,4次元の相対論的場の量子論をテンソルネットワークにより研究するために必要な一歩が踏み出せたと言える.

Strategy for Future Research Activity

a) スカラー理論の新しいテンソルネットワーク形式を用いて,今後はより複雑な模型である2次元有限密度複素スカラー理論や相互作用を含む超対称性模型を研究する予定である.また,今回の \phi^4 理論の研究では,テンソルネットワークの粗視化法として最も単純な TRG という手法を用いた.TRG の精度は臨界点近傍で悪化することが知られており,これまでにその点を改良した複数の粗視化アルゴリズムが報告されている.今回の成果として,場の離散化による系統誤差が TRG による誤差よりも小さいことが分かったので,今後は改良されたアルゴリズムを用いることでより高精度で臨界結合定数が計算できると考えている.その方針で今回得られた結果を精密化していく研究を予定している.
b) 乱択化された高次テンソルくりこみ群の有効性は,扱う系の次元や模型の詳細に依存することが予想されるので,今後は実験的な研究をいくつか行なう必要がある.3次元以上のスピン系や2次元の複雑な模型に対しても新手法の有効性が確かめられれば,その後は新手法を大規模化・並列化し,高次元の非自明な系の解析に着手する.フェルミオンを含む模型への応用もこれまでに知られている技術との組み合わせにより実現可能なので,4次元有限密度QCDを見据えて研究を進める.

  • Research Products

    (6 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Tensor network study of two dimensional lattice $\phi^{4}$ theory2018

    • Author(s)
      Ryo Sakai, Daisuke Kadoh, Yoshinobu Kuramashi, Yoshifumi Nakamura, Shinji Takeda, Yusuke Yoshimura
    • Journal Title

      PoS

      Volume: LATTICE2018 Pages: 94

    • Open Access
  • [Presentation] 乱択的な行列-行列積を用いた高次テンソルくりこみ群2018

    • Author(s)
      坂井涼, 武田真滋
    • Organizer
      日本物理学会第74回年次大会
  • [Presentation] テンソルくりこみ群による2次元$\phi^{4}$理論の臨界結合定数の計算2018

    • Author(s)
      坂井涼
    • Organizer
      ポスト「京」萌芽的課題サブ課題D「量子力学と情報」研究会
    • Invited
  • [Presentation] 素粒子模型におけるテンソルくりこみ群2018

    • Author(s)
      坂井涼
    • Organizer
      第46回北陸信越地区素粒子論グループ合宿研究会
  • [Presentation] テンソルくりこみ群による2次元$\phi^{4}$理論の臨界結合定数の計算2018

    • Author(s)
      加堂大輔, 藏増嘉伸, 中村宜文, 坂井涼, 武田真滋, 吉村友佑
    • Organizer
      日本物理学会2018年秋季大会
  • [Presentation] Tensor network study of two dimensional lattice $\phi^{4}$ theory2018

    • Author(s)
      Ryo Sakai, Daisuke Kadoh, Yoshinobu Kuramashi, Yoshifumi Nakamura, Shinji Takeda, Yusuke Yoshimura
    • Organizer
      Lattice 2018
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2019-12-27  

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