2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the generation mechanism of cyclical fluctuation in retail gasoline price: spatiotemporal model approach
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18J10665
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河又 裕士 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ガソリン小売市場 / エッジワース・サイクル / 周期 / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
価格競争が行われる財の小売価格の推移において、エッジワース・サイクル(EC)と呼ばれる周期的変動が現れることがある。ECとは価格の急激な高騰と緩やかな下落を繰り返す周期的変動のことである。日本のガソリン小売市場では、小売価格が同期して周期的(EC)変動をする店舗のクラスタと、非周期変動をする店舗のクラスタが空間的に共存している。これは、周期的クラスタのような秩序的現象と、非周期的クラスタのような非秩序的現象が空間的に共存していること、つまり、部分的に秩序立っていることを意味する。本研究の目的は、現実のガソリン小売価格の変動に見られる時間的・空間的秩序、特に、部分秩序的な変動が発生する機構の解明である。 本年度では新たにオーストラリア・NSW州のガソリン小売市場の価格データを入手した。そして分析の結果、NSW州の市場においても日本と同様に部分秩序的な現象が見られることを確認した。更にNSW州では、地域によって周期の異なるECが現れていることがわかった。 地域によって周期の異なるECが発生する背景を小売店の行動様式のレベルから分析することは、本研究の目的を達成するためには必要不可欠である。従って本年度はこの分析も行った。分析の結果から、(1) 人口あたりの店舗数が多い地域ほどECの周期が長くなる傾向があることと、(2)店舗の価格決定様式が地域的要因から影響を受けること、そして、このことがECの周期を説明するためには重要であることがわかった。 これらの分析結果をまとめ上げ査読雑誌へ投稿した結果、条件付き採録の判定を受けた。現在再投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はアンケート調査をすることで日本における小売店の行動様式を推定する予定であった。しかし、精度の高いオーストラリア・NSW州の価格データが手に入り、このデータを分析することで小売店の行動様式を推定することが可能になったためアンケート調査は行わなかった。 研究の進め方に変更はあったが期待通りの進展があったといえる。この理由として次の三つが挙げられる。(1)現実の小売店の行動様式を推定した。(2)査読付き雑誌への投稿を行った。(3)シミュレーション・モデルの作成に取り掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主にオーストラリア・NSW州のガソリン小売市場に対する検証を行った。NSW州の市場においても日本と同様に部分秩序的な現象が見られることを実データの分析によって確認した。従って、部分秩序的な現象は様々な国でも現れうる頑健なものであると考えられる。 今後は、どのような条件において部分秩序的な現象が現れるかを日本とNSW州のデータを用いて検証する。また、現実の小売店の行動様式をもとに時空モデルを構築し、シミュレーションを行う。得られた結果を国際会議で発表し、そして、査読付き雑誌へ投稿する。
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