2018 Fiscal Year Annual Research Report
チーターの高速走行を可能にする力学条件の解明とその応用
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18J10682
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上村 知也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | Quadruped running / Body flexibility |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)バウンド歩容において体幹柔軟性が床反力を低減するメカニズムの動力学的解明 以前の研究(Kamimura et al., Artif. Life Robotics, 2015)において,体幹の中央部に回転バネとジョイントを持つシンプルなモデルを用いて,4脚ロボットのバウンド歩容において,体幹柔軟性をもたせた場合とそうでない場合を比較したとき,体幹柔軟性があるほうが脚にかかる床反力を低減できることを示した.ただし,体幹のバネを固くするにつれて,床反力が低減するという結果も同時に示された.これらの一見矛盾した現象を説明するため,モデルにいくつかの力学的な拘束を導入し,さらにシンプルなモデルを構築することで周期解を解析的に求めた.得られた解析解から,体幹柔軟性を持つモデルにおいて,体幹が一つの剛体でできているモデルよりも床反力が低減されたメカニズムが示された.さらに,バネ定数が大きくなるにつれて床反力が低減するメカニズムを示し,上記の現象に対して説明を与えた. (2)チーターのギャロップにおいて,2種類の飛翔期が交互に現れるメカニズムの動力学的解明 実際のチーターの高速走行は脚が地面についている立脚期と脚が地面から離れている飛翔期を繰り返す.飛翔期において,体幹を曲げているものと体幹を伸ばしているものの2種類が交互に現れる.これに対し,上記の研究で得られた周期解では,体幹を伸ばしている飛翔期を持つものしか得られなかった.これはチーターの走行を力学的に再現するには不十分であり,どのような条件下で2種類の飛翔期が得られるかを探る必要があると考えた. モデルを改良し,その周期解を解析的に計算した結果,体幹の質量中心に対して床反力を受ける位置が,飛翔期の種類を決定するために重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに解析解から,2種類の飛翔機が交互に現れるための力学的条件が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,①これまでの研究成果をまとめた原著論文が採録され,②新たな研究課題に取り組み,得られた結果の検証のために外部の研究機関と共同研究を行い,当初の計画以上の研究の進展があった. ① バウンド歩容における体幹柔軟性と床反力の関係について,シンプルなモデルを用いた解析解を用いることで,床反力が低減されるメカニズムを簡潔に説明した.この結果について国内学会SCI’18で口頭発表を行い,その成果を認められて学生発表賞を受賞した.さらに,結果をまとめた論文を筆頭著者として執筆し,IEEE Robotics and Automation Lettersに採録され,国際学会IROS2018における発表を行った. ② これまでの研究で用いていたシンプルなモデルから得られる周期解が,チーターのギャロップの歩容特徴を再現するには不十分だと考え,モデルの改良・周期解を求める力学条件の再検討を行った.その結果,チーターのロータリーギャロップを再現する周期解を得るための条件を解析的に明らかにした.さらに,モデル解析の妥当性を検証するため,実際のチーターの走行データとの比較が重要と考え,実際の計測データとの比較を行った.現在はこれらの内容についてまとめた原著論文を執筆中である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在のモデルは多くの仮定を含み,前進方向の運動やピッチ方向の回転運動を持たない.走行運動を再現し解析するには,これらの運動を含めて考えることが肝要である.そこで,今後の研究においては,現在のモデルに含まれている仮定を解放することを考えている.ただし,この場合モデルが複雑になり,解析し原理を理解できる領域を超えてしまう可能性がある.そこで,前進方向の運動や回転運動は微小であると仮定し,摂動法を用いて解析する方法を考えている. さらに,ロボット実機を用いて,これまでの解析によって得られた知見が,ロボットモデルを用いても得られるかを検証する.これは生物データとの比較よりも実験条件を整えやすく,より限定的な力学現象を検証するのに適していると考えられる.
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Research Products
(3 results)