2018 Fiscal Year Annual Research Report
都市計画における住民参加手続及び司法統制の比較法的考察
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18J10696
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
李 明芝 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 都市計画法 / 参加 / 行政訴訟 / 戦略的環境影響評価 / 台湾法 / オーフス条約 / 都市計画 / 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はオーフス条約に基づいて、日本と台湾の都市計画への参加仕組みと司法訴訟制度の問題点を明らかにし、イギリス法を参考にしながら、仕組みの改善提案をすることを目的としている。第一年度の研究重点は、①日本における都市計画策定の手続についての公衆参画に関する規定の調査、②台湾における都市計画参加手続及び台湾の都市計画訴訟制度の立法動向、調査と分析とした。 第一に、日本の都市計画関連の参加条例について、調査結果の一部を2018年5月に大阪大学環境民主主義研究会にて発表した。第二に、台湾の都市計画の参加手続においては、今までの規定に加え、新しい仕組みの聴聞手続も設けられているため、その規定と問題点をまとめ、同年7月に神戸大学公法研究会、9月に京都台湾研究中心研究会にて発表した。更に、その聴聞手続の実務状況を考察するために、同年8月に台湾で聴聞手続を担当した元内政部係員にインタビューし、都市計画参加手続や訴訟制度に関する文献も収集した。第三に、都市計画は環境に関連する計画であり、環境影響評価と密接な関係がある。そのため、都市計画を策定した際に、それを対象とする環境影響評価を実施するのか、環境影響評価の市民参加と訴訟制度はどのように規定されているのかを検討する必要がある。2018年8月には台湾台北では台湾の環境影響評価訴訟について発表し、9月に大阪大学で開催された「環境法の参加原則に係る評価指標―アジアの環境アセスメント制度をめぐってー」専門家会議では台湾の環境影響評価参加手続の現状について報告した。また、都市計画を対象とする環境影響評価の実施状況を把握するために、2019年1月に台湾で元行政院環境保護署副署長へのインタビュー及び資料収集した。 以上の調査を通じ、台湾の都市計画制度と環境影響評価の全体像、それに係る参加手続、訴訟制度の問題点を明らかにし、その結果を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、日本の都市計画関連の参加条例について、1788自治体の条例を調査した結果、独自の都市計画参加手法を定めている自治体は限定的であるという状況が明らかになった。 第二に、まず、台湾の行政主導の都市計画の参加手法については、最新立法動向のほか、新しい仕組みの実態を把握するために、本研究は担当の台湾内政部職員の協力を得て、2018年の実施状況をヒアリング調査し、参加手続の問題点を明らかにした。また、都市計画に関連する環境影響評価の参加手続について、本研究は元行政院環境保護署副署長の協力を得て、その実施状況をヒアリング調査した。台湾では一部の都市計画を対象とする戦略的環境影響評価制度があるのに、実施事案はわずか11件にとどまっている。また、参加手続は乏しいのみならず、訴訟対象ともならないという問題点も明らかになった。 第三に、台湾の都市計画訴訟制度について、法制度改革が進んでいることを把握した。2016年12月9日の司法院大法官(憲法法廷に相当)解釈第742号は都市計画を訴訟対象として直接認めた後、2019年1月11日に司法院大法官解釈第774号は、都市計画範囲外の第三者への原告適格を広げた。2018年12月に台湾司法院が提出した「都市計画審査手続」の章を加えた行政訴訟法の改正案では、都市計画の違法の是正、人権保障と都市計画の全体的調和を考慮したうえで、新たな都市計画訴訟類型として「都市計画の無効宣告訴訟」を設け、当該訴訟は「客観訴訟」であると位置付けている。日本では、特別の都市計画争訟制度が検討されたものの立法化は実現しておらず、台湾の新たな訴訟類型は、日本との比較検討を進めていく上で有益なものであると考えられる。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は日本の都市計画関連の参加条例を調査し、台湾の都市計画の参加手続と訴訟制度を調査・分析した。また、都市計画を対象とする戦略的環境環境影響評価について、台湾ではまだ大きな制度的課題が残っており、日本とイギリスの制度との相違も明確である。第二年度は昨年度の研究成果に基づき、文献調査を続け、日本の都市計画制度、参加手続及び訴訟制度の問題点を詳細に分析し、台湾の制度と比較検討する。また、イギリスの文献や判例をさらに調査し、都市計画と環境影響評価・持続可能性評価の参加手続と訴訟制度の実施状況を参考にしながら、台湾と日本の仕組みへの改善提案を行う。
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Research Products
(6 results)