2018 Fiscal Year Annual Research Report
Finite-Element Analysis and optimal design of wireless power transfer system using magnetically shielded wire coils
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18J10778
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 祥伍 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 磁性被覆線の均質化有限要素解析 / 複素透磁率 / ワイヤレス電力伝送装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
2030 年には,わが国の自動車のうち20~30 %が電気自動車になると予想されている.そこで現在,わが国に電気自動車設計のためのワイヤレス電力伝送装置の開発が盛んに行われており,装置内部の鉄損と銅損の低減は大きな課題である.さらに,ワイヤレス電力伝送で用いられる高周波帯(数10~数100 kHz)では,主として,外部磁界の効果によるコイル導線の渦電流損失を低減することが望まれる.そのためには,外部磁界を遮蔽できる磁性被覆コイルが有効である.磁性被覆線は通常の導線とは異なり,導体が薄い磁性体で被覆されている.磁性被覆の磁気遮蔽効果から,導線と鎖交する磁束を減らせる.このため近接効果に起因する渦電流損失を大幅に減らすことができる.したがって,ワイヤレス電力伝送装置において,磁性被覆コイルを利用することで,受電効率の上昇が期待できる. ワイヤレス電力伝送装置の送電効率を評価するには,空間分割型の解析である有限要素解析が有効である.しかし,磁性被覆の膜厚は数 μm程度であるので,3次元モデルでは数億の未知となり,電気自動車のサイズを考慮すると,3次元有限要素解析は事実上不可能である.そこで,本研究では,磁性被覆コイルを,素線の渦電流を考慮した複素透磁率をもつ均質な物質として扱うことを検討する.本法により,磁性被覆線コイルを,複素透磁率をもつ均質な物質として扱うことができるため,粗い有限要素により解析が可能となり,3 次元モデルを含めた解析が可能となる. 上記研究内容に関係する学会論文誌への投稿に関しては,平成30年度分で,受理された論文が3件である.また,現在1件投稿予定の論文がある.学会発表に関しては,国際学会での発表が3件,国内学会での発表が1件である.また,平成29年度分の研究活動において,表彰が3件あった.このことからも,本研究活動は注目を集めていると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,磁性被覆線を含む系の効率的な解析を行うために,均質化法を用いた新しい解析法を開発している.主として,周波数領域,時間領域解析,いずれにおいても従来の有限要素法による解析と良好に一致した磁性被覆コイルの損失評価ができているとわかった. さらに,提案手法を拡張して,(磁性)楕円線導体の解析も行えることが示せた.楕円形状のコイルの損失特性は,平角線の十分な近似になっていることがわかった.これによって,コイル形状の表現がより豊かになり,ワイヤレス電力伝送装置の他,回転機や変圧器,インダクタ等にも使用可能であるため,その波及効果は大きい. 加えて,電気自動車の給電部分を覆う電磁シールドが存在する場合を想定した解析を検討している.電磁シールドは非常に薄く,さらに高周波では外部磁界を打ち消すような反作用磁界が発生するに伴い,電磁シールド内部に渦電流が流れるため,電磁界が局在化する領域(表皮厚)とそうではない領域が生じ,モデリングは極めて難しくなる.そこで,本研究では,インピーダンス境界条件を導入する.本法では,電磁シールドの渦電流の効果を境界条件に反映させることで,形状モデリング上,電磁シールドを厚さ0の面として扱うことができ,内部特性は伝達関数として有限要素法と連成できる.したがって,磁性被覆コイルの均質化有限要素法を用いて,ワイヤレス電力伝送装置の3次元空間での最適化を高速に行うことができる. 上記研究の進捗状況の報告として,平成30年度の研究業績の概略を述べる.学会論文誌への投稿に関しては,受理された論文が3件である.また,現在2件投稿予定の論文がある(その内,1件はすでに投稿し,判定待ちの状況である).学会発表に関しては,国際学会での発表が3件,国内学会での発表が1件である.また,昨年度の平成29年度分の研究活動において,表彰が3件あった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,研究計画書に記載した磁性被覆コイルを用いたワイヤレス電力伝送システムの最適化を実現するための方法の1つとして,応答曲面法に基づく送電効率評価法に関して検討している.応答曲面とは,データ空間の点群からなる空間を曲面に近似して補間することで,最適解の候補を簡易的に見つける方法である.応答曲面法を用いることで,ワイヤレス電力伝送装置の各部位の寸法や,磁性体の透磁率,磁性被覆線の材質,断面形状,巻数等のパラメータを考慮した最適化を効率的に行うことができる.本研究における最適化では,コイルの構造,鉄心の構造および材料を変化させる.目的関数は伝送効率として,拘束条件は漏洩磁界強度とする. また,得られた最適化構造に基づき,実験を行うことを検討している.その初期検討として,磁性被覆線を科研費を用いて購入し,磁性薄膜コイルの特性評価を実験で検証する.磁性体コアは軟磁性ゴム材料を用いて成型し,シミュレーションに基づく特性が,測定値と一致することを確認する.測定結果が概ね妥当であれば,最適化結果に基づいて,小型のワイヤレス電力伝送システムを試作し,伝送効率,漏洩磁界を測定する.測定結果と解析結果を比較して最適化の妥当性を検討する.コイルの位置ずれや,コイルの傾きの影響を解析と実験により検討し,これらの効果が顕著な場合には,これらを考慮した最適設計を実施する予定である. さらに,現実のワイヤレス電力伝達装置の磁性コアには非線形特性があるので,時間領域解析において,磁気飽和を考慮した解析をも行う必要がある.そこで,今後の研究においては,磁気飽和を考慮した磁性コアの等価回路生成と提案する均質化有限要素法の連成に関する検討を行う.磁性コアの材質には,渦電流損失を低減するため,数μmのサイズの磁性粒子からなる圧粉磁芯のが用いられることがある.この磁性粒子群の均質化法も今後の課題である.
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Research Products
(6 results)