2018 Fiscal Year Annual Research Report
シュアー的アソシエーションスキームのクライン数と置換群の既約指標の関連について
Project/Area Number |
18J10848
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊東 桂司 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | アソシエーションスキーム / クライン数 / 置換群 / 既約指標 / コヒアラント配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シュアー的アソシエーションスキームのクライン数と可移置換群の既約指標の関係について調べた。代数的組合せ論には、グラフ、組合せデザインや符号などの組合せ構造がよく知られており、それらを代数的に解釈するときにアソシエーションスキームが用いられる。そのため、アソシエーションスキームはさまざまな組合せ構造を一般化した概念として扱われることが多い。特に、アソシエーションスキームが可換と呼ばれる性質を満たすときには、その性質の良さから非常にさまざまな発展的な研究がされている。その中の一つにクライン数と呼ばれる定数があり、アソシエーションスキームを特徴づける重要な定数として扱われている。 アソシエーションスキームは置換群とも関連があり、可移置換群からアソシエーションスキームを構成することができる。そのようなアソシエーションスキームはシュアー的と呼ばれ、シュアー的なアソシエーションスキームが可換であるときに、クライン数と可移置換群の既約指標の間にある関係があることが知られており、"Scott の定理"と呼ばれている。 これらを踏まえ、非可換アソシエーションスキームやコヒアラント配置に Scott の定理を一般化することを目標とした。それにあたって、まずは可換アソシエーションスキームのクライン数を一般化しようとした。 可換アソシエーションスキームのクライン数は、アソシエーションスキームの原始冪等元の集合によって定まる定数であることから、非可換アソシエーションスキームやコヒアラント配置に対しても原始冪等元に類似した元を定義し、それらを用いてクライン数を定義することができた。 今後の展開として、それらのクライン数と既約指標の関連について調べていき、Scott の定理の一般化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
可移置換群から得られる可換なシュアー的アソシエーションスキームの一般化として、可換とは限らないシュアー的アソシエーションスキームや、可移とは限らない置換群から得られるコヒアラント配置が挙げられる。しかし、これまでの先行研究ではクライン数は可換なアソシエーションスキーム上でしか定義されていないため、クライン数の定義を非可換なシュアー的アソシエーションスキームやコヒアラント配置上に拡張しなければならない。 本年度の研究成果として、シュアー的アソシエーションスキームが”nearly mutliplicity-free”という条件を満たすとき、隣接代数の中に原始冪等元に相当する元を定義することができ、クライン数を定義することができた。また、それを一般化してシュアー的とは限らないアソシエーションスキームに対しても、特定の条件を満たすときに、同様に原始冪等元に相当する元とクライン数を定義することができている。 さらに、コヒアラント配置に対しても、コヒアラント配置がファイバー可換という条件を満たすとき、原始冪等元に類似した元の集合を定義することができ、クライン数を定義することができた。 また、ファイバー可換なコヒアラント配置のクライン数に関連した研究として、そのクライン数を用いてコヒアラント配置のクライン条件と ”absolute bounds” を簡単に記述することに成功している。この2つの式は可換アソシエーションスキーム上でも定義されているので、本研究で定義したファイバー可換なコヒアラント配置の ”bases of matrix units”とクライン数が、可換アソシエーションスキームの原始冪等元とクライン数の自然な拡張になっていることを裏付けている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、より一般にファイバー可換とは限らないコヒアラント配置のクライン数を定義することを目的としている。さらに、コヒアラント配置の隣接代数を一般化したコヒアラント代数を考えることによって、アソシエーションスキームやコヒアラント配置といった違いを無視できるような一般的な形でクライン数の定義を記述することを目的としている。 それら研究を踏まえ、置換群からアソシエーションスキームやコヒアラント配置を構成したときに、置換群の既約指標とアソシエーションスキームやコヒアラント配置の一般化されたクライン数の関連について調べる。非可換アソシエーションスキームやコヒアラント配置のクライン数を定義したことによって、可移とは限らない置換群に対しても、そこから得られるアソシエーションスキームやコヒアラント配置のクライン数を決定することができる。 特に、クライン数を与えている bases of matrix units の集合は隣接代数の表現から定まっていることから、それを介してクライン数と置換群の既約指標に関連を見出すことができると推測される。 また、可換アソシエーションスキームに対する Scott の定理の逆が成り立たないような反例が知られていることから、非可換アソシエーションスキームやコヒアラント配置に対して、Scott の定理を一般化したときにその逆が成り立たないような反例についても調べる。
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